こっそり修正された『日本国紀』(幻冬舎)
発売直後から、記述の誤りやWikipedia等からの「コピペ疑惑」が取り沙汰され、話題をかっさらっている、百田尚樹センセイの『日本国紀』(幻冬舎)。その内容については先日、本サイトでも書評したが、どうも、増刷をかけるにしたがって、方々からツッコミを受けた箇所を“サイレント修正”しているようだ。
たとえば『日本国紀』は、「万世一系」を説明するコラムのなかで〈日本には過去八人(十代)の女性の天皇がいたが、全員が男系である。つまり父親が天皇である〉と記載していた。本サイトでも指摘したように、実際には皇極天皇と元正天皇の父親は天皇に即位していないので間違いだ。当然、ネットでも「百田は男系を理解していない!」なるツッコミが相次いだわけだが、これが4刷(奥付11月25日発行)では〈日本には過去八人(十代)の女性天皇がいたが、すべて男系である。つまり父親を辿ると必ず天皇に行き着く〉というふうに直されていた。
現在、『日本国紀』は5刷まで増刷されており、ネット有志の検証によれば、例の「Wikipediaコピペ疑惑」の箇所含む数多の修正がなされているという。ちなみに、都内の某大型チェーン書店では『日本国紀』が大量に平積みされていたのだが、いくつか手に取って確認してみたところ、修正前の1刷と修正後の4刷や5刷が混在していた。ようするに、コッソリと修正しただけで、前のバージョンの回収は行なっていないということらしい。
問題は、書籍に修正の有無や履歴が記されておらず、当事者たちも訂正についてほとんど口を閉ざしていることだ。
たとえば、張本人である百田センセイのTwitterを見てみると、〈ウィキから引用したものは、全体(500頁)の中の1頁分にも満たない〉(11月21日)、〈僅かなミスを指摘して、「嘘本!」呼ばわり。全体の1%にも満たないwikiからの引用を取り上げて、「コピペだ!」と印象操作〉(同24日)などと逆ギレするだけで、修正についてはだんまり。
編集を担当した有本香氏も〈私含む編集側の校正ミスがあったことは読者の皆様にお詫び申し上げます〉(11月20日)とはツイートしたものの、修正箇所についての具体的言及はない。
12月4日放送の『真相深入り!虎ノ門ニュース』(DHCテレビ)では、百田センセイとともに、ゲストとして『日本国紀』の「監修」として挙げられている江崎道朗氏が出演したが、やはり、二人とも『日本国紀』の修正には一切ふれなかった。
だが、これは百田センセイだけの問題ではないだろう。というのも、版元である幻冬舎のホームページを見てみたが、やっぱり、謝罪はおろか、疑惑に関する見解や修正・訂正の告知、刷りごとに異なる記述の正誤表の類もいっさい、見当たらないのだ(12月5日現在)。こんなのってありなのか? まるで百田センセイと有本サン、そして幻冬舎がグルになり、「フェイク」や「コピペ疑惑」等を“なかったこと”にしようとしているみたいではないか。
いや、なかったことにしようとしているどころではない。こんなに問題が起きている本であるにもかかわらず、幻冬舎はいまも社を挙げて、百田センセイを守り抜くつもりらしい。つい最近も、同社のドン・見城徹社長がホストを務めるトーク番組『徹の部屋』(AbemaTV)に、百田センセイと有本氏、さらに幻冬舎の『日本国紀』担当編集者である高部真人氏が出演。4人で『日本国紀』に対する自画自賛トークを繰り広げたのだ(11月25日放送回)。