実際は、法案審議で野党は、外国人技能実習制度の廃止あるいは抜本的見直し、受け入れ総数の上限規制、入国在留管理庁ではなく多文化共生庁の創設など、さまざまな「対案」をいくつも提案している。本来であれば、そうした意見を取り入れて法案を練り直すべきだが、与党はそれを全部無視して、具体的な中身を法案成立後に政府がフリーハンドになる政省令で決めてしまおうとしている。
なのに、こうした状況をメディアがきちんと伝えることなく、野党の抵抗を「引き伸ばし」と呼び、「対案を出せ」と批判する。そうして、国民も「野党はだらしない」と思考停止する。──ようするに、『ひるおび!』をはじめとするテレビ報道がやっていることは、安倍政権をアシストする世論づくりではないか。
いま、野党を批判するとすれば、自民党の大島理森衆院議長が関連する政省令が整った段階での衆院法務委での質疑を設けるという“異例”の指示を出したことを受けて、昨日、衆院本会議での高市早苗・衆院議院運営委員長の解任決議案の提出を見送ったことだ。たったの約17時間の審議で法案を参院に送る暴走に対し、徹底した抵抗もせず、法案成立後の審議と交換に引き下がるとは情けない──そうした批判を野党は受けて当然だ。
だが、野党が引き下がったのも、「引き伸ばしでは国民は共感しない」「対案を出せ」という声を抑えるためだったのだろう。メディアが安倍政権の問題点を無視して野党に批判の矛先を向け、国民もそれに同調し、またメディアが「国民は共感しない」と叫んで、野党が萎縮する。こんな悪循環では、安倍政権は心置きなく暴走ができるというものだ。
(編集部)
最終更新:2018.11.28 10:54