事後の反応も含めて、まさに暗澹とさせられる言論状況が広がっていることを再認識させられるが、しかし、香山氏はまったくひるむ様子を見せず、淡々とした口調でこう語る。
「だからこそ、この件については、きちんと声を上げ続けなきゃいけないと思っているんです。周りには、そういう活動をするから、こんな目に遭うんだよってアドバイスしてくれる人もいるんですけど(笑)、やっぱりそこは譲れない」
しかも、香山氏は最近の状況にけっして絶望しているわけではなく、むしろ「希望」を感じ始めているという。
「今年春から、ネットの空気が少し変わってきた気がしてるんです。弁護士への大量懲戒請求や動画BAN祭りをきっかけとして、ヘイトスピーチのひどさに新たに気づく人、その解消のさまざまな取り組みに新しく参加してくれている人が増えたと思います。しかも、彼らは従来の『右』『左』といった政治的スタンスとは切り離されて、『こんなひどい差別的な動画やSNSなどでの発言は世界に対して恥ずかしい』というスタンスで、楽しみながらやっているところがこれまでの反差別活動とはかなり違う。その動きには私もたいへん励まされました。そしてその頃から、SNSで私に対して言葉に出して応援してくれたり、今回の中止の件も『ひどい』と言ってくれたりする人もたくさんいた。以前は“見て見ぬフリ”の人がほとんどで、孤立無援な感じでしたからね。こうした動きを心の糧にして、これからも出来る範囲で、臆せずきちんと声をあげていきたいと思っています」
(取材・文/編集部)
最終更新:2018.11.28 11:39