繰り返すが、ネトウヨたちが口走っている「裁判所は植村を捏造記者だと認定した」という話はまったくの事実無根である。しかし驚くのは、櫻井氏側が公の場で、こうしたデマを助長するような発言をしていることだ。
植村氏が会見を開いた翌16日の午後、櫻井氏も日本外国特派員協会での会見に臨んでいた。その質疑応答での一幕でのことだ。まず、北海道新聞の記者がこのように質問した。
「植村さんが捏造したということは、判決では認定しませんでしたけども、櫻井さんはいまでも植村さんが記事を捏造したとお考えでしょうか」
「櫻井さんは1998年に植村さんの名前を出して、植村さんが『誤報』、もしくは『混同』しているというふうに批判されました。けれども、次に2014年になって記事を書かれた時に、突然『捏造した』という記事に変わりました。なぜ、何を根拠に『捏造』という表現に変えたんでしょうか」
これに対して櫻井氏はこう述べた。
「私は、植村さんの記事については、『捏造したと言われてもしかたがないだろう』という意見を申し上げたと思います。時間が経つにつれていろんなことがわかってきて、植村さんがそのようにしたのではないかという疑問が、強くなったために、捏造したと言われても弁明できないのではないかと、仕方がないだろうということを書きました。以上です」
櫻井氏は自分が使った「捏造」という言葉のまずさがわかっていたのか、明らかにごまかしながら、しかし、それでも自分の「捏造」攻撃があたかも正当であるかのように強弁した。しかも、そこに櫻井氏の主任弁護人である林いずみ弁護士がこう付け加えたのである。
「一点だけ。いま北海道新聞の長谷川さんが、この判決は捏造を認めなかったというふうにおっしゃり、昨日の(会見で配布された)植村さんの判決の要約もそのように書いていると思いますが、そのようなことはありません」
ようするに櫻井氏の主任弁護士は、裁判所が植村氏を「捏造」と認めなかったことを否定しにかかったのである。これではまるで、「裁判所は植村氏を捏造記者と認定した」なるデマを振りまいているネトウヨを扇動しているようなものではないか。