オカルト大臣によって教育まで歪められるという恐ろしさ──。しかも、この下村文科相の「江戸しぐさ」推しには理由があった。それは、「親学」と「江戸しぐさ」が密接な関係にあることだ。
「親学」とは、極右団体「日本会議」の中心メンバーである高橋史朗氏が提唱するもので、“子どもを産んだら母親が傍にいて育てないと発達障害になる。だから仕事をせずに家にいろ”という科学的には何の根拠もないことをふりかざす差別的な教育理論。下村氏はこの親学推進議員連盟の事務局長まで務め、2012年5月のブログ(現在は削除済み)では、〈そもそも発達障害にならないためには、赤ちゃんの時からテレビを見せ続けないことや、これまでの伝統的育児をすることだが、今の若い親はそういう方法を知らないし教えられていない〉と記述し、「障害者差別だ」という批判コメントが殺到して大炎上した。
じつは、この「親学」が歴史的根拠としているのが、「江戸しぐさ」なのだ。原田氏の著書『オカルト化する日本の教育──江戸しぐさと親学にひそむナショナリズム』(ちくま新書)によると、「親学」提唱者の高橋氏は“日本の子どもが礼儀正しかったのは江戸講や寺子屋などで親と地域が一体となって「江戸しぐさ」を教えてきたから”だと主張しているが、原田氏は〈親学の歴史的根拠が現代人の創作である「江戸しぐさ」に求められている〉ことを指摘し、「江戸しぐさ」が下村文科相の下で道徳教材に採用された理由について〈親学の思想的影響の一つと考えることができる〉と述べている。
しかし、下村氏が文科相を退いているからといって「終わった話」にはできない。というのも、「親学」はトンデモ理論であると同時に、「伝統的な子育て」と称し、女性を強制して家庭に縛り付ける戦前の「家制度」のような思想を復権させようとするものだ。実際、安倍首相が会長で下村氏が事務局長となってきた親学推進議員連盟は教育の責任を家庭の自己責任に押し付け、旧来的な家族像を押し付ける「家庭教育支援法」の立法化をめざしてきたが、これは極右が主張する憲法24条改正の布石ともされている。
そして、安倍首相は憲法改正に向け、下村氏を自民党憲法改正推進本部長に据えた。「(野党は)職場放棄」発言によって下村氏は早々に自爆し憲法審査会の幹事と委員から外れることとなったが、“オカルト極右”というもっとも危ない下村氏が憲法改正の中心人物であることに変わりはない。その危険性には今後もさらに注意を向けたほうがいいだろう。
(編集部)
最終更新:2018.11.23 10:14