ニセ科学の代表「EM菌」「ナノ銀」にも飛びついた下村博文のオカルト体質
しかも、下村元文科相の“オカルト”問題はこれだけではない。同じように2011年にはブログで〈記念講演での比嘉照夫氏の地震災害後のEMの活用についての話が興味深かった。EM技術による放射能被曝対策もできるそうだ〉〈私も勉強してみたい〉などと記述。「EM菌」(有用微生物群)は「EM菌を海や川に投入すれば浄化される」「健康増進に効果がある」などと広まっているが、2003年に広島県保健環境センターが「室内実験で水質の浄化作用が全く認められなかった」としたように、科学的根拠の乏しい“ニセ科学”の代表例。それを下村氏はアピールしていたのだ。
その後も下村氏は、2012年にもブログで「ナノ銀」による放射能の除染法について触れ、〈放射線量そのものを低減し無害化する方法であるが、文科省や原子力研究開発機構などの理解が得られず、あまり進んでないという〉〈放射線量の低減や無害化に向け勉強し、国会で質問することにした〉と報告。だが、「ナノ銀」による除染もEM菌と同様、科学的に効果は実証されておらず、ナノ銀除染について国会で質問を受けた際、下村氏は文科大臣として「日本原子力研究開発機構が関係の大学とともに2度にわたる試験を実施したが、残念ながら効果は確認されなかったものと聞いている」と述べている。
あやしい“ニセ科学”に飛びつき、結果、自分自身がその効果がないことを国会で答弁せざるを得なくなるという皮肉……。しかし、問題はそんな人物が、よりにもよって文科相となったことだ。
実際、下村氏が文科相になったことによって、教育現場はオカルトに侵されてしまった。2014年に道徳を「特別の教科」へと格上げしたが、文科省が作成・配布した道徳教材「私たちの道徳」では、真っ赤な嘘であることがわかっている、あの「江戸しぐさ」を堂々と掲載したのだ。しかも、この道徳の教材を、学校に置きっぱなしにせずうちに持ち帰っているか調査させる通達まで下村氏自ら出すほどの徹底ぶりだった。
「江戸しぐさ」は“江戸時代に広がった生活マナー”だとして一時期もてはやされたが、偽史・偽書の専門家である原田実氏はこれが1980年代につくられたものであることを突きとめている。ようするに史料の裏付けも科学的根拠もない“ニセの伝統”を文科省は取り上げたのである。