菅義偉ホームページより
来年10月の消費税2%引き上げを予定通りおこなうと閣議で表明した安倍首相だが、この引き上げについては各社世論調査で「支持しない」「反対」が「支持する」「賛成」を大きく上回るなど、臨時国会を前に安倍政権に暗雲が立ちこめている。
だが、そんななか、菅義偉官房長官がさっそく「アメ」をもち出し、国民にちらつかせはじめた。22日、産経新聞が一面で「携帯値下げ、来年10月にも 菅氏見通し」と報じたのだ。
これは21日に産経のインタビューに応じた菅官房長官が明言したもので、そのインタビューで菅官房長官はこう語っている。
「携帯電話料金について、私は「4割値下げの余地がある」と訴えてきました。日本は(料金が)高すぎる」
「4割が妥当かどうかですか。今より安いほうがいいに決まっている」
「政治介入との指摘もありますが、最初から覚悟してやっています。国民からみて、あまりにおかしいことは直していく」
たしかに、菅官房長官は携帯電話料金問題を節目節目でぶち上げて政治利用してきた。なかでも露骨だったのが、今年9月に行われた沖縄県知事選だ。
翁長雄志・前知事が8月8日に急逝、県知事選が繰り上げられるや否や、県知事選の総大将となった菅官房長官は同月21日に講演会で「(携帯料金を)いまより料金を4割程度下げる余地がある」と発言。そして、選挙戦がはじまると、自民党推薦の佐喜真淳候補は公約に「携帯電話の料金を4割削減させます!」を掲げ、菅官房長官も街頭演説で「携帯料金を4割程度引き下げる方向に向かって実現をしたい」と訴えたのだ。
だが、これは完全にデタラメな選挙公約だった。実際、総務省は「国の法で料金をこれにしようと言える権力はどこにもない」と回答(琉球新報9月25日付)し、県知事にも国にも携帯料金を値下げする権限はないと説明。政府関係者も「(引き下げを求められても)事業者側がそれに従う法律などはない」と答えている。
無論、こんなことは総務大臣の経験がある菅官房長官は百も承知だ。にもかかわらず、佐喜真候補が当選すれば携帯電話料金の大幅値下げが実現可能であるかのように喧伝したのである。
こうした官邸が仕込んだ騙しの公約の嘘を見破った沖縄県民の賢明な判断にはあらためて拍手を送りたいが、この沖縄県知事選でもち出した“アメ”を、今度は全国に向けて菅官房長官が触れ散らかしはじめたのだ。
携帯電話の普及にともない家計負担が上昇しているのは事実だが、前述したように国には値下げの権限がない。それでも、菅官房長官がこんなことを口にしているのは、ただの手柄の横取りだという見方が強い。
「菅さんは総務省に力をもっていて、総務省で有識者会議を立ち上げさせたりしていますが、スタンドプレーにすぎない。現に、キャリア各社は反発しています。ただ業界のトレンドとして、楽天の新規参入などもあり、携帯料金はこれから下がる傾向にある。政府の方針とはなんの関係もない」(ITジャーナリスト)
実際、「携帯値下げ、来年10月にも」と1面トップで威勢の良い見出しを掲げた産経新聞だが、よく読むと、菅官房長官のインタビューでの発言は「競争が働けば必然的に料金は下がるでしょう。少なくとも(インターネット通販大手の)楽天が(携帯電話事業に)参入する(来年10月)あたりには変わっているんじゃないですか」というもの。結局は民間企業で競争が起こることに期待しているだけなのだ。
それを官房長官自らがあたかも実現する話のように触れ回るのは、はっきり言って詐欺的行為だろう。