もちろん健全に運営されているアイドルもあるが、こうしたトラブルは決してめずらしいことではない。トラブルになったり表面化していなくても、アイドルへの夢や憧れをエサに、いわゆる“やりがい搾取”的に過酷な環境を受忍させられているアイドルたちも少なくないだろう。
大本さんらアイドルにぶつけられる自己責任論のひとつとして、「どんな事務所なのかよく調べずに入ったのが悪い」「事務所をちゃんと見極めるべき」というものがあるが、大手も含め芸能事務所の契約問題についてきちんとメディアが伝えているとは言い難い。それに、そもそも愛媛など地方ではアイドル活動ができるプロダクションの数も限られているだろうし、また、多くの選択肢がある東京や大阪といった大都市圏に出るにも、金銭や家庭のサポートといった面でハードルが高い。“子どもの貧困”が深刻化するなか、家庭の経済状況によっては都市部のいろんな事務所のオーディションを受けたり情報を入手することすら困難な者だっているだろう。
そもそも、未成年者を預かる以上、プロダクションは仕事のパートナーであると同時に、親や先生のように保護者的な役割も担う責任がある。
そうである以上、学業との両立のサポートや心身の健康状態など、アイドルの家庭との密なコミュニケーションは必須なはずだが、現状出ている情報では、それがうまくいっていたとは言い難い。
裁判による真相の究明と同時に、こうした悲劇を繰り返さないためにアイドルを取り巻く環境が一刻も早く改善されることが必要だろう。
もう1点指摘しておきたいのは、もし高校の学費問題が自殺のトリガーになっているのだとしたら、“経済的理由で高校に通えない子ども”を生み出している日本の経済政策もやはり大きな問題だ。
いずれにしても松本人志の言う「死んだら負け」とか「死んだらかばってくれる風潮がいや」とか自己責任で片付けられる話では、まったくないということをあらためて繰り返しておきたい。
(編集部)
最終更新:2018.10.18 11:05