神社本庁HP
有名神社の相次ぐ離脱・後継問題、富岡八幡宮殺人事件、そして、本サイトでも追及してきた「神社本庁・不動産不正取引疑惑」などで、いま、大きく揺れている神社界。全国約8万社を包括する宗教法人・神社本庁の上層部に、その責任が問われている。
先日、本サイトでもお伝えしたように、神社本庁の田中恆清総長が9月11日の役員会で辞意を表明。朝日新聞や神社本庁の機関紙的専門紙「神社新報」もこの件を報じた。
神社新報によれば、田中総長は役員会で「これ以上、皆さんがたからいろんな意味で暗に批判されるようなことは耐えられません」「私は今日で総長を引かせていただきます」と発言したというが、一方で、本サイトの9月20日の取材に対し神社本庁広報は「田中は『自分一人だけの判断で決められるものではない』とも申しております。20日現在では辞表は提出されておりません」と回答。続投に含みを持たせていた。
そうしたなか、今日、その田中総長が「辞意を撤回した」との情報が飛び込んできた。都内中堅神社の神職が「その兆候はありましたが……」と漏らし、こう明かす。
「本日10月9日、田中総長の辞任を否定する通知が関係各所に送付されました。各地の神社庁の長宛てに本庁総務部長の名で出された正式な文書です。今月3日に顧問と長老が出席した臨時役員会で、田中総長が9月の役員会での発言を説明したうえで今後も総長に留まることになったようです」
神社本庁の「顧問」といえば主に総長経験者、「長老」は副総長以下の経験者のことを指す、いわばOBの名誉職だ。この神職によれば、文書には「本件について一部事実誤認とも言える報道が先行している」「憶測等による無用の混乱を避けるものである」との釘を指す文言が添えられていたという。
しかし、不可解なのは、なぜ一度は役員会で辞意を示した田中総長が、ここにきて続投を明言し、顧問・長老がそれを応援したのか、だ。背景はやはり、例の不動産不正取引疑惑とそれにまつわる神社本庁と元幹部職員との裁判があるとしか思えない。
この神社本庁で勃発した不動産問題と本庁上層部の疑惑について、詳細は本サイトの既報をご覧いただきたい(https://lite-ra.com/2018/09/post-4272.html)が、神社本庁は2017年、内部から上層部の癒着と不正疑惑を告発した元総合研究部長・稲貴夫氏と、田中総長らから契約をめぐる圧力をかけられたと主張した元教化広報部長・瀬尾芳也氏2名を懲戒処分にした。稲氏らは処分無効を求めて東京地裁へ提訴。現在も係争中だ。
その裁判のなかで、田中総長や「その盟友で実質的ツートップ」(神社関係者)といわれる神道政治連盟・打田文博会長の息のかかった職員などによる圧力発言の存在(神社本庁側は否定)、稲氏らの処分の根拠となった第三者委員会の調査報告が極めて不可解なものであった事実などが次々浮かび上がってきたことは既報の通り。追及の手が伸びていったところで、9月の田中総長による辞意表明という流れだった。
「9月の役員会での田中総長の辞意発言のきっかけは、まさに、理事のひとりから裁判の和解について提案されたからでした。役員会での議論は数時間に及び、結果、田中総長が怒りまじりに『それなら私がやめる』というふうに言い出したのです」(神社本庁関係者)