さらに取材を進めていくと、Aさんは事故時に3年生だったが、少なくとも退学や長期停学などの厳しい処分にはなっておらず、現在も防衛大学校に在学中で、4年生に進級しているという情報も得られた。とすれば、前述の「選択」が書いていたように〈「政治的忖度」が働いたとの見方が広がっている〉のも無理もない話だろう。
そこで、本サイトは事実確認のため、9月13日、防衛大学校に対してAさんの事故に関する防衛大の対応を質す質問状を送った。
防衛大の担当者によれば「本省(=防衛省)との調整に時間を要する」とのことで、返答には少々の時間がかかったが、18日に総務部総務課社会連携推進室広報係名義での回答があった。それによれば、防衛大側は事故の当日にはAさんからの連絡で把握していたという。防衛大生の自動車運転に関する規約についても質問したが、学校外において車両を運行する場合は事前に防衛大の許可を得ねばならず、「誓約書」の提出や防衛大が計画し実施する交通安全講習の受講も義務付けられているとのことだった。
一方で、夏季定期訓練期間中の学生の車の運転を許可しているか、あるいは当時、Aさんは防衛大に運転の届け出を行なっていたかという質問に対しては、〈昨年度の事故に関与した学生の所属においては、夏季定期訓練期間中の学生 の車の運転は届出があっても禁止しておりました〉との回答だった。やはり、潮氏の娘・Aさんは、防衛大が禁じている車の運転を行い、死亡事故を起こしていたのだ。
しかし、不可解なのは、この事故をめぐる処分についての防衛大側の回答だ。
というのも、防衛大は〈事故に関与した学生に対し懲戒処分を行っていますが、学生の懲戒処分については、原則として、従来から公表しておりません〉とするだけで、Aさんに対する処分の内容を一切、明かさなかったのである。
言っておくが、防衛大学校の学生は特別職の国家公務員で、将来は幹部自衛官となる者がほとんどだ。在学中は学費が無料であるうえ、学生手当として給与をもらいながら訓練をしている(2018年現在、月給11万4300円に加え約37万7000円のボーナス)。つまり、防衛大生は一般的な大学生とはまったく立場が異なり、いわば「公人」に準ずる立場にあると言える。
当然、防衛省という公的機関の一部である防衛大学校は、その学生への処分を公にする必要があるだろう。官僚などの国家公務員であれば、死亡事故に関する懲戒処分は必ず公開されるからだ。