だが、問題は小川氏だけではなく、この差別を上塗りした論文を堂々と掲載した「新潮45」にもあるだろう。差別を丸出しにした杉田論文を掲載したことで「新潮45」にもその説明を求める声があがってきたが、それに対して「真っ当な議論のきっかけとなる論考をお届けする」などといってさらなる差別論文を「新潮45」は載せた。──これは『ニュース女子』沖縄ヘイト回を一切謝罪せず、それどころか検証と題してさらなるヘイトを煽ったDHCテレビや番組出演者たち、森友学園公文書改ざん報道を「朝日の捏造」と断言して攻撃し、改ざんが事実だと判明した以降もバッシングを展開している「WiLL」(ワック)や「月刊Hanada」(飛鳥新社)と同じやり方だ。
もともと「新潮45」は保守色の強い雑誌だったが、それが2016年9月号から現在の若杉良作編集長に交代してからはさらに“ネトウヨ雑誌”化していると指摘されてきた。しかし、この10月号によって、「新潮45」は「WiLL」「月刊Hanada」と同じく、ヘイトや差別、フェイクを平気で垂れ流す極右メディアだと宣言したも同然だ。
老舗の大手出版社である新潮社までもが、ヘイトや差別で金儲けをする──。まったく辟易とするほかないが、この「新潮45」の姿勢に対しては、新潮社社内でも反発があるようだ。
というのも、昨晩Twitter上では、「新潮社出版部文芸」のアカウントが「新潮45」や新潮社を批判するツイートを次々とリツイート。いったん削除されてしまったが、今日朝になってまた「新潮45」批判ツイートのリツイートを再開させ、「新潮45」やそれを売る社に対して異を唱えている。さらに、10時46分には、新潮社創業者である佐藤義亮の言葉として、こんな言葉をツイートした。
〈良心に背く出版は、殺されてもせぬ事〉
昨年、ベストセラーとなったケント・ギルバート氏のヘイト本『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』をめぐっても、版元の講談社では労働組合の会報で編集者らが社に対する強い批判を寄せていた(過去記事参照https://lite-ra.com/2017/10/post-3544.html)。大手出版社が出版を「文化」ではなく「ビジネス」だと開き直り、ヘイトや差別をも商売にするとは嘆息せざるを得ない。新潮社は百田尚樹の『カエルの楽園』などのトンデモヘイト小説を出版するなど、これまでも老舗文芸出版社としての看板を自ら汚してきたが、良識ある編集者たちにはぜひ、今回の「新潮45」問題を社内で提起してもらいたいと願うばかりだ。
(編集部)
最終更新:2018.09.19 01:59