北海道電力の泊原発施設紹介ページより
6日午前3時8分ごろ、北海道胆振地方中東部を震源とし、厚真町で最大震度7を観測する地震が発生した。地震の影響で北海道全域の約295万戸が停電。北海道電力や政府によれば、停電は震源に近い苫東厚真火力発電所の緊急停止により、道全域の「電力需給バランス」が崩れたためだという。簡単にいえば、苫東厚真発電所の停止によって、各発電システムにおいて一定に保たねばならない電気の周波数が乱れたことで、故障を防止するために道内の火力発電所が自動停止したのだ。
北海道における最大震度7の地震、全域に渡る大停電は異例の事態であり、政府には被災者の救助や支援、インフラの復旧に最大の努力をしてもらいたいが、そんななか、Twitterでは「原発が再稼働していれば停電は防げた」なる主張がでてきている。大停電にかこつけて、2012年から1〜3号の全機が停止中の泊原発の再稼働を進めようとする動きが相次いでいるのだ。
実際、原発再稼働派の評論家・池田信夫氏は〈大停電の再発を防ぐには、泊原発の再稼動が不可欠だ〉と主張し、ホリエモンこと堀江貴文氏も〈これはひどい。。そして停電がやばい。泊原発再稼働させんと。。。〉〈原発再稼働してなかったのは痛い〉などと連投。ほかにも、Twitter上ではこんなツイートが続々と飛びだしている。
〈安全地帯にあった泊原発が動いていれば全停電なんて起きなかった〉
〈泊原発が動いていれば、北海道全域が停電することはなかったのに。原発再稼働反対を叫んでいたお花畑左翼達のせいで、北海道は孤島になってしまった〉
〈北海道の停電は原発再稼働反対派による人災と言ってもいいのでは?〉
ネットだけではない。全国紙も同じような論調だ。たとえば日本経済新聞が昨日出した「北海道地震、なぜ全域停電 復旧少なくとも1週間」という記事では、〈道内の泊原子力発電所(泊村)も運転を停止中で供給力に余裕はない。今回の大規模停電は、一カ所の大規模火力発電所に依存することの脆弱さが浮き彫りになった形だ〉と締められている。停電を引き起こした北電の脆弱性はそのとおりだが、わざわざ泊原発の運転停止にかこつける意図は見え見えだろう。
他紙でもこの日経記事によく似た記事が見られる。おそらく、北電・政府側のブリーフィングをもとに書いたのではないか。原発再稼働に躍起となっている安倍政権と原子力ムラが、この大停電を利用して、今後、泊原発再稼働に向けたキャンペーンを次々にぶってくることは容易に想像がつく。
しかし、冷静に考えてみてほしい。話はむしろ逆だろう。「泊原発が稼働していたらよかった」というのは、明らかに倒錯している。
地震による停電で泊原発は外部電源を喪失したが、非常用電源による冷却が使用済みの核燃料だけで済んだのは、言うまでもなく、運転停止中の原子炉内に核燃料がなかったためだ。その意味では、いまのところ泊原発で事故が確認されていないのは“不幸中の幸い”と言うべきだろう。
いや、それ以前に、泊原発が「安全地帯にある」という前提のほうこそ「お花畑」と断じるしかない。そもそも、今回の地震ではたまたま泊原発付近は震度2で済んだが、事実として、大規模地震が原発を直撃しない保証はどこにもないのだ。