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キムタク『検察側の罪人』の安倍政権風刺がキレキレ! 山口敬之事件や安倍昭恵、日本会議を想起させる描写も

 歴史修正主義批判も出てくる。実は最上の祖父はインパール作戦から奇跡的に生還した経歴をもっており、そのときの経験をもとにした反戦小説はベストセラーにもなったという設定。そして、最上もまた、戦前の日本に戻そうとする高島グループに強い危機感を抱いていた

 そして、最上と丹野の間では、高島グループが牛耳る日本の現状についてこんな会話もかわされる。

「民主主義は壊されようとしている」
「検察の上層部も高島グループとつながっている。三権分立がなってない」
「日本の報道の自由度は、北朝鮮よりちょっとマシなくらい」
「奴らは太平洋戦争を正当化しようとしている」

 まさに、ど真ん中の安倍政権批判である。

 また、丹野が宿泊するビジネスホテルから妻に電話するくだりがあるのだが、このビジネスホテルの経営者は、「世界極右会議」なる団体と急接近している妻のお友達という設定。そして、丹野は電話で妻にこんな皮肉を言う。

「いまお前の友だちが経営するホテルにいる。お前たちの頭のなかのようにおぞましい部屋だ」

 これは、安倍首相の“ビッグスポンサー”である元谷外志雄が経営し、南京大虐殺を否定し歴史修正主義を喧伝する書籍を客室に常備しているアパホテルを意識したものだろう。

 さらに、ラスト近くで、自殺した丹野から高島グループの金銭疑惑に関する資料を託されたキムタク検事が「高島グループの資金は戦争国家に戻すために使われている!」とその疑惑を明るみにする意欲を、ニノに熱弁する。

 こうしたセリフはもちろん、山口敬之氏や、安倍昭恵氏、アパホテルを想起せずにはいられない設定、インパール作戦の部分は、文藝春秋から刊行されている雫井脩介氏の原作小説には一切登場しない。本筋には関係ない要素を入れたことに、とくに原作ファンの観客からは賛否両論も巻き起こっている。

 ただ、今作を担当した原田眞人監督には、そうした批判が出るのを覚悟してまで、どうしても原作にはない、社会風刺の要素を入れたいとの強い思いがあったようだ。

 原田監督は「キネマ旬報」(キネマ旬報社)2018年8月下旬号のインタビューで「今の日本が危険な状況下にある以上、現代社会を反映させた要素を僕はどんどん打ち出していきたい」と、上記のような要素を入れざるを得なかった心境を説明している。

 また、インパール作戦についても「僕が思うには、ああいった日本の悪しきシステムは、平成のいまも日本の社会のなかにまだ根深く残っている、そういうことを静かに伝えなければと思いました」(『検察側の罪人』公式パンフレット)と、70年以上前の昔話ではなく「いま」の問題であると強調。そのうえで、「例えば、アドルフ・アイヒマンを描いた映画はドイツで毎年のように作られ続けています。でも日本でいま、そういう映画はない。けれども、どこかで語られ続けなければいけない」(前同)とも語り、「映画」というメディアを使って過去の教訓を伝え続ける必要性を語っている。

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