実際、この「スリーパーセル」発言が炎上して反論した際、三浦氏は〈すべての情報源を明らかにすることはできませんが、本件は、専門家の間では一般的な認識〉〈国民にとって重要なことですので、どのような状況か、公開情報となっているものを紹介していきましょう〉と思わせぶりに大見得を切った後、真っ先に〈韓国の情報源に基づく英国の記事〉として紹介したのは、あの「デイリー・メール」の記事だった。
「デイリー・メール」といえば、フェイクがしばしば問題になっている有名なイギリスの右派系タブロイド紙であり、1934年にネッシーが湖面から首を出した写真を初めて掲載して大きな話題になったことでも有名。その上、三浦氏が掲げた「デイリー・メール」記事は同紙が取材したものですらなく、同紙よりもさらにお下劣な日本でいう実話誌のようなタブロイド紙「デイリー・スター」の記事を引用したもので、しかも、両紙の記事とも北朝鮮本国が工作員に向けてラジオ放送で暗号を送っているというよく聞く話を書いているだけで、北朝鮮のスリーパーセルがテロを起こそうとしているなんていう話は一切書いていなかった。
さらに三浦氏は再反論で〈(阪神)大震災時の迫撃砲発見などの事後的な未遂案件〉とやらがあると言い出したが、これも具体的な根拠やディテールのないもので、あきらかにデマと思われる情報でしかなかった。結局、2018年現在、「テロを起こす可能性のあるテロリストが潜伏している」「大阪がヤバイ」と言う根拠はまったく示せなかった。
国際政治学者でないと知り得ないような情報源や資料をもっているのかと思いきや、三浦氏は得意気にそんなシロモノを根拠にし、在日差別を繰り返したのである。
これだけではない。三浦氏は2017年8月12日付けの東京新聞のインタビューで、「大日本帝国が本当の意味で変調を来し、人権を極端に抑圧した総動員体制だったのは、一九四三(昭和十八)~四五年のせいぜい二年間ほど」と主張。言わずもがな、言論の自由など基本的人権を著しく制限した希代の悪法・治安維持法が制定されたのは1925年のことで、国家総動員法が制定されたのは1938年。三浦氏はこんな中学校の教科書にも載っているような歴史的事実を無視し、「経済的に比較的恵まれ、今よりも世界的な広い視野を持った人を生み出せる、ある種の豊かな国家だった」と戦前を賛美するのだ。
さらに「民主政治は成熟しました」「人権を守る強い制度も定着した。あの時代のような拷問や弾圧が容認されるはずがないでしょう」「警察官もはるかにプロ意識のある集団に育ち、抑制が利いています」と印象論で共謀罪の危険性を否定してみせた。いやいや「人権を守る強い制度」「抑制が効いている」って、ふつうに新聞を読んでいるだけでも自白強要や令状なしのGPS捜査や盗撮など警察が人権を無視した乱暴な捜査をしていた事例はこの数年でも枚挙にいとまがないし、取り調べの可視化すら認められず2013年に国連の拷問禁止委員会で日本の刑事司法は戦前どころか「中世並み」と指摘されているのだが……。