さらに15日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)では、拉致問題の歴史を振り返る説明のなかで、2002年10月の拉致被害者5人の「一時帰国」について、MCの羽鳥アナウンサーがフリップを使いながらこのような解説を入れていた。
「安倍総理はこの当時、官房副長官でした。このときに、帰ってきた5人に対して『絶対に(北朝鮮に)戻したらだめだ』と。これを戻したら2度とあの5人は戻ってこないということで、安倍さんが結局、戻さなかったんです」
前後の流れとは関係なく、帰国しなかったというエピソードが安倍首相の手柄としてわざわざ語られたのは、明らかに不自然だった。
もし、安倍官邸が“やるやる詐欺”をごまかすために「拉致の安倍」エピソードを再び喧伝しようとしているのならば、あらためて釘を刺しておかなければならないだろう。実は、こうした安倍首相の北朝鮮武勇伝は、ほとんどが安倍氏自らが吹聴した自己宣伝のデタラメである。
その典型が、前述の『モーニングショー』が紹介した「安倍首相が拉致被害者5人の北朝鮮への帰国を止めた」という話だ。
たしかにこのとき、日本政府は当初、拉致被害者5人は一時的な帰国であり、その後北朝鮮に戻すと約束していたが、結果的に5人が日本に「永住帰国」する決断をしたという経緯があった。そして、マスコミでは「安倍官房副長官(当時)が止めた」という話がまことしやかに報道され、安倍首相自身もFacebookで“帰さないという自分の判断は正しかった”と書き込むなど、あたかも自分の手柄のように吹聴してきた。
しかし、これはまったくの嘘である。このことを著書『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社)のなかで告発したのは、当時、拉致被害者である蓮池薫さんたちと行動をともにしていた兄の蓮池透氏だ。透氏は今回、本サイトに改めてこう語った。
「安倍さんが弟たちを北朝鮮に返さないように説得したというのは、真っ赤なウソです。少なくとも弟を説得したのは私であり、安倍さんではありません。当時の官房長官だった福田康夫さんが朝日新聞のインタビューで、2002年の10月23日の夕方に安倍さんが官房長官室に飛び込んできて、『携帯で全員の確認を取りました。帰らなくてもよいということでした』という報告を受けたと言っているのですが、私や弟にそんな電話はなかった。そのとき私は弟たちと新潟の温泉宿にいましたが、安倍さんからの連絡なんてひとつもなかったんですから」