さらに、安倍首相がカジノ解禁に突き進む理由はもう一つある。安倍首相は、カジノ進出を狙うセガサミーホールディングス会長の里見治氏と“蜜月関係”にあるからだ。
セガサミーといえばパチンコ・パチスロ最大手の企業だが、2012年に韓国のカジノ企業と合弁会社を設立し、昨年4月には韓国・仁川に大型カジノリゾートをオープン。カジノが解禁されれば、その恩恵を大きく受ける企業だ。実際、セガサミーは五輪東京招致のオフィシャルパートナーとなり、政界の“五輪開催のタイミングでカジノ合法化へ”という動きのなかでカジノ利権の主導権を握ろうと存在感を高めてきた。そうしたなかで、セガサミーは国内カジノ利権の主導権を握るため政界工作をおこなってきたと言われている。
そして、カジノ解禁に向けて里見会長が目をつけたのは、安倍首相その人だった。
ふたりの出会いは第一次安倍政権時だと見られ、2007年1月30日には赤坂の全日空ホテルで安倍首相と里見会長は会食をおこなっている。さらに政権交代によって下野してからは、さらにふたりの関係は密になったという。
そんな間柄を象徴するのが、2013年9月に開かれた、里見会長の愛娘と経産キャリア官僚だった鈴木隼人氏の結婚披露宴だ。ホテルオークラで開かれたこの披露宴には、森喜朗、小泉純一郎といった首相経験者や、菅義偉官房長官、茂木敏充経産相(当時)、甘利明経済再生担当相(当時)といった大物閣僚らが揃って駆けつけたが、そんななかで安倍首相は新婦側の主賓を務めている。
さらに、安倍首相は主賓挨拶で「新郎が政界をめざすなら、ぜひこちら(自民党)からお願いします!」と、鈴木氏にラブコール(「FRIDAY」13年10月4日号/講談社)。実際、翌年12月に行われた解散総選挙で鈴木氏は比例で自民党から立候補するのだが、このとき鈴木氏は初出馬ながら比例上位に選ばれ、当選を果たす。ここに安倍首相の根回しがあったことは想像に難しくない。事実、昨年の衆院選でも、安倍首相はわざわざ鈴木議員の選挙区に応援に駆け付けている。
また、2015年1月には里見会長の自宅に銃弾が撃ち込まれるという発砲事件が起こったが、このときこぞって週刊誌が“カジノ利権の争いが事件の背後にあるのでは”と書き立てた。鈴木氏の衆院選当選によって安倍首相と里見会長の関係がより深くなり、カジノが解禁されれば“参入業者の最有力候補”となる里見会長へのやっかみがあったのではないかというのだ(「週刊朝日」2015年1月30日号/朝日新聞出版)。