だが、安倍首相はもはや“加計問題は終わった”という態度に終始。その上、17日おこなわれた衆院内閣委員会では「前川前次官も含めて、私から指示や依頼を受けた人は一人もいない」と答弁した。前川氏は15日に文書で「私は加計学園獣医学部新設を安倍首相自身の強い意向だという認識をもっていた」とする反論文を出し、「私の名前に言及することは極めて心外であり、私の名前をこのように使わないでいただきたい」と公表したが、安倍首相はそれを無視して、またも前川氏の名前をもち出して加計問題を正当化したのだ。
部下に無理筋の答弁をさせ、謀略によって貶めた相手の主張をねじ曲げて自己正当化の道具にし、誰もが虚偽とわかる嘘を吐きつづける。──この異常な状態を、的確に言い表した者がいる。作家の室井佑月氏だ。
室井氏は2018年5月11日放送『大竹まこと ゴールデンラジオ』(文化放送)で、柳瀬氏の国会答弁を、このように表現した。
「その場に一人しかいなくて、テーブルの上のきな粉餅がなくなってて、そいつの口のまわりにきな粉がいっぱいついてるんだけど『食べたところ見てないだろ!』って言われたら。その感じなんだよ」
まさに言い得て妙であり、これは「加計孝太郎理事長と獣医学部の話はしていない」などと言い張る安倍首相にも同じことが言えるだろう。しかし、膝を打っている場合ではない。この室井氏の発言を受けて、ジャーナリストの青木理氏は、こうつづけた。
「口の周りにきな粉をいっぱいつけているくせに『俺は食っていない!』って言うようなことが、一般でも通らないのに、国会や国政の場で通ってしまうと、この社会の根本的なモラルもそうだし、民主主義社会の基盤が壊れていっちゃうという意味でいうと、ものすごく重大なこと」
公文書の改ざんしかり、セクハラ暴言しかり、この加計問題での政治の私物化しかり。一般社会ではけっして許されないのに、国の中枢が「やってない」「問題ない」「わからない」などという強弁や言い訳でやり過ごそうとしている。いま、日本大学アメリカンフットボール部の問題と安倍政権の対応の類似性が指摘されているが、安倍首相を黙認するということは、不正義がまかり通る社会を許すことになるのだということを、よくよく考えなければいけないだろう。
(編集部)
最終更新:2018.05.19 10:56