クライアントは、元の職場できっとやり直せると淡い期待を抱いて職場復帰したが、クライアントにパワハラをし続けた営業所長は、クライアントに対し、クライアントの座席を営業所長の前に移動するように命じたのであった。職場を戻りやすい環境にするという本部の担当者の言葉を信じたクライアントは、見事に裏切られてしまったのである。
クライアントは、パワハラをし続けた営業所長の目の前で仕事をしなければならなくなり、営業所長からの直接的な言葉の暴力はないものの、多大な精神的苦痛を受けるようになった。クライアントは、本部の担当者に連絡をして座席の変更をお願いしたが、本部の担当者は、営業所長に任せてあると言うだけで何の対応もしなかった。
クライアントは、家族を養うために我慢して、しばらくの間、勤務を続けたが、そのうち精神的に耐えられなくなり、再び休職することとなった。クライアントの職場復帰への期待は無残にも打ち砕かれたのである。
クライアントは、再び、私のもとへ相談にいらっしゃった。私は、クライアントの話を聞き、パワハラに苦しんで休職していた社員を、パワハラをしてきた張本人の目の前で仕事をさせるようにした、相手方会社の対応は極めて悪質であると判断し、クライアントの代理人となり、相手方会社に対して、パワハラ防止義務違反、職場復帰支援義務違反を主張して損害賠償請求の示談交渉を行った。
クライアントは、営業所長から暴言をあびせられた際、ボイスレコーダーで録音しており、また、主治医にパワハラの事実を詳細に話していたので、精神科のカルテにパワハラの事実が詳細に記録されていた。そのため、本件では、パワハラの事実を立証することが十分可能であった。また、相手方会社もパワハラの事実は認めていたので、争点は損害賠償の金額であった。特に、慰謝料の金額が問題となった。