しかし、星田の例が象徴的なように、この国では、ただデモに参加しただけでバッシングにさらされる実情がある。
星田のデモ参加以前にもそういうことはあった。2015年の安保法制に対する国会前の抗議デモに参加し、「戦争は文化ではない」と印象的な演説を行った石田純一の例は記憶に新しい。
周知の通り、そのデモ参加の後に石田は、事務所から厳重注意を受け、それのみならず、テレビ番組の出演予定をキャンセルされたり、CMからの降板を余儀なくされたりといった圧力を受けた。
もちろん、星田の脳裏にもその騒動の記憶はあった。彼は演説をしたわけではなく、ただ市民のひとりとしてデモに参加しただけなので、わざわざツイッターにデモ参加を書き込まなければバッシングも受けずに済んだ。番組では「俺だってツイッターに書く必要ないもの。すごい考えたよ。リスクのほうがデカ過ぎますからね」と語り、その選択肢も考えていたことを明かしつつ、それでもリスクを承知でデモへの参加をツイッターに書き込んだ決意をこのように語っている。
「俺みたいなリスク大抱えしている奴もやっぱり足を運んでしまうのがいまの現状なんですよっていうのを、やっぱりわかってほしいというのがあったよね」
本サイトでもお伝えしてきたように(リンク)、星田はこれまでもツイッターの投稿などを通じて、安倍政権への異議申し立てを続けてきた。
しかし、そのような安倍政権批判をしたところで、それは芸人・星田英利としてはビジネス上、何の旨味もなかっただろう。むしろ、安倍応援団からの理不尽な炎上にさらされて、損なことしかなかったはずだ。では、なぜ彼はそのような行動を続けているのか。それは、人として、「大人」としての矜持だった。
「僕らに何ができるかというと、大人として思っていることをちゃんと言う姿を子どもたちに見せんとあかんと思うんです」(大阪民主新報2017年10月22日号)
この日の『AbemaPrime』に出演した、星田英利、村本大輔、水道橋博士といった面々は、炎上リスクを恐れて多くの芸能人が口を閉ざすなか、果敢に政権批判を口にして、言うべきことを言ってきた人たちだ。権力におもねる芸能人ばかりが跋扈するなか、彼らのような勇気ある真っ当な「芸人」がもっと増えることを切に願う。
(編集部)
最終更新:2018.05.12 09:04