しかし、この春蝶が単なる「ビジネス保守」狙いだったとしても、だからといって軽視するわけにはいかない。
実際、ケント・ギルバートも最初はネトウヨ相手に細々と右派メディアで中身のない安倍政権擁護や中国、韓国批判をしていただけだったが、途中からめきめきと売れっ子になり、地上波のコメンテーターにも進出。しかも、その論調もどんどんエスカレートして、昨年には、中国、韓国人を〈「禽獣以下」の社会道徳や公共心しか持たない〉〈彼らは息をするように嘘をつきます〉〈自尊心を保つためには、平気で嘘をつくのが韓国人〉などレッテルを貼って差別を扇動する完全なヘイト本『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社)を出版した。
彼らがそうなっていく理由の一つには、右派界隈の要請があるのだろう。アッチ側の世界では、いくら差別発言をしようがマイノリティを叩こうがトンデモ歴史観を披露しようがフェイクを連発しようが、身内からはまったく批判されることがなく、また、従来のコワモテ保守オヤジ以外のカジュアルな人材が渇望されている。その意味でも、桂春蝶は“先輩”であるケント・ギルバートと同じ道を辿っていくのではないかと思えてならないのだ。
事実、その片鱗はすでに春蝶の発言にあらわれている。周知の通り、最近の右派界隈の潮流のひとつは、安倍政権をひたすらヨイショし、“韓国叩き”を扇動すること。その流れのなかで春蝶は、前述の夕刊フジでの連載だけでなく、韓国の文在寅大統領が日韓合意について「誤った問題は解決すべきだ」と話したことに関し、今年の1月11日、こんな恐ろしいツイートまで放っていた。
〈謝罪が必要なのは韓国側だ。
約束を反故し、嘘をついて我が国を貶める。これは韓国国家元首自らが下したテロ行為で、日本国民は日韓はいま「準戦争状態」と思っていいと思う。
安倍首相の平昌欠席なんて当たり前。
一回オールジャパンでええ加減にせえ!と、韓国に言おうよ!〉
日韓合意見直しという政策を「テロ行為」と位置づけ、韓国とは「準戦争状態」にあると煽りたてる……。もはや、この落語家がどんどんアッチ側へ突き進んでいくのは疑いないだろう。
そういう意味では、今回の〈世界中が憧れるこの日本で「貧困問題」などを曰う方々は余程強欲か、世の中にウケたいだけ〉〈この国での貧困は絶対的に「自分のせい」〉なる発言は、ほんの序章にすぎない。このトンデモ落語家が影響力を持つなんてことにならないようの、その言動に目を光らせておく必要がありそうだ。
(宮島みつや)
最終更新:2018.02.26 11:59