前述のように、民放のワイドショーがマッチョな父権主義的意見に支配されるなか、本当の意味で女性の視点に立とうとする『あさイチ』のこうしたスタンスは非常に貴重なものだった。
さらに『あさイチ』は、“政治的”とも捉えられるテーマにも果敢に取り組んできた。
沖縄の本土復帰45年目だった昨年の5月15日には、沖縄の基地問題を特集。沖縄で暮らす人々のリアルな声を伝えた。いかに米軍基地に脅かされながら生きているかという生々しい声が紹介される一方、「わたしたち沖縄の若者は基地があるのが当たり前になっていて、基地について何も思わない人も多いと思う」という若い世代の意見も紹介された。
しかも特筆すべきは、この特集がたんに基地問題の“両論併記”をするだけでは終わらせず、「沖縄の問題は日本全体の問題だ」と提起したことだろう。たとえば、柳澤秀夫NHK解説委員は沖縄に対する「本土」の傲慢をこう指摘した。
「僕自身も正直、こうやって沖縄の基地のことを取り上げるときに、原稿上は『沖縄の基地問題』って書くじゃない。これにものすごく違和感を感じているんですよ、最近。『沖縄の問題』『沖縄の基地問題』、これ違うんじゃないかと。『日本の問題じゃないか』って。沖縄と本土というよりも日本全体の問題だってことを意識しないと、これは現実をきっちり捉えることできないんじゃないかって、つくづく思う」
そして井ノ原は、「(本土から切り離されていた過去は)全部それって、しょうがないことじゃなくて、いろいろ軍のことだったりとかいろんなことが関わっているわけだから、それをずっとひきずりながらいまも暮らしていて、いまも生活を脅かされているというところで想像していかないと」と視聴者に投げかけた。
これだけメジャーな番組で沖縄の問題は日本全体の問題だ」と提起し、「歴史と現状を踏まえた上で沖縄のことを想像しよう」と呼びかける。これは大きな意義のある特集だった。