山口敬之『総理』(幻冬舎)
昨日17日、安倍首相が外遊から帰国した。訪問先では相も変わらず北朝鮮の脅威を煽ってまわったが、そうした北朝鮮問題を隠れ蓑にして数々の疑惑追求から逃げてきたのは周知の通り。だが、22日に召集される通常国会では、モリカケにつづく新たな疑惑にもスポットがあてられるだろう。昨年12月、経産省所管法人からの助成金4億円超を詐取した容疑でペジーコンピューティング社長の齊藤元章氏が逮捕された一件だ。
齊藤社長は1月4日に詐欺の容疑で再逮捕されたが、疑惑をおさらいすると、ペジー社には経済産業省が所管する国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から総額35億円以上の助成金交付が認められていた。さらに、齊藤社長が創設したペジー社の兄弟会社・ExaScalerに対しても、文部科学省所管の国立研究開発法人「科学技術振興機構」(JST)が総額60億円を限度とした融資を決め、そのうち約52億円が支出されている。
現在、東京地検特捜部が注目しているのは、なぜこれほどの国費が投入されることになったのか、その経緯だ。ペジー社はNEDOより8年前から助成金の交付を受けていたが、その額は年を追うごとに増加。とくに2017年度から18年度の事業では少なくとも12億6000万円の交付が認められていたという。
そして、この巨額助成金交付疑惑の鍵を握る人物が、「安倍首相にもっとも近いジャーナリスト」と呼ばれてきた元TBS記者でジャーナリストの山口敬之氏だ。これまでも伝えてきたように、山口氏はTBS在職中に齊藤社長と知り合い、その後、ペジー社の顧問に就任。齊藤社長は毎月、山口氏が生活の拠点にしていた永田町ザ・キャピトルホテル東急内の高級事務所の家賃約200万円と、顧問料200万円を支払っていたと伝えられている。その上、山口氏がTBSを退社する2カ月前の2016年3月には齊藤社長と一般財団法人「日本シンギュラリティ財団」を設立。山口氏が代表理事、齊藤社長が理事に名を連ねていた。
あわせて約100億円という巨額の助成金交付と、安倍首相と昵懇である山口氏の存在──。そのため、助成金交付の裏で山口氏が関与していたのではないかという疑惑がもたれてきたわけだが、ここにきて、極めて重要な新たな情報が報じられた。
それは、本日発売の「週刊新潮」(新潮社)の記事。同誌では、山口氏が検察に携帯電話を任意で提出していたことを伝えているのだが、そのなかで特捜部の関係者がこのような証言をおこなっているのだ。
「山口がペジーの顧問になって以降、彼と齊藤が経産省に担当者を訪ねたことがあります。その席で2人は“官邸が了解しているのになぜ急がないのか”というような問いを投げかけたとされている」