新聞もまた韓国批判一色だ。読売新聞と産経新聞は10日付の社説、毎日新聞11日付の社説で文大統領の「新方針」を猛批判した。読売と産経は「慰安婦問題を蒸し返すな」と政権の代弁をし、毎日は〈政権交代があっても国家間の約束は守るというのが国際常識〉と講釈を垂れる。唯一、朝日新聞(10日付)だけは〈何よりめざすべきは、元慰安婦のための支援事業のていねいな継続〉として〈その意味では日本側も「1ミリたりとも合意を動かす考えはない」(菅官房長官)と硬直姿勢をとるのは建設的ではない〉と安倍政権に釘を刺したが、〈理解に苦しむ(文大統領の)表明〉と併記するなど、やはり完全に腰砕けである。
言っておくが、そもそも国家が「秘密交渉」として当事者を抜きのまま勝手に決めた合意に、最初から意味などない。その本質をネグったまま、大手紙やテレビは「国家間の合意を反故にするのはおかしい」と振りかざしているわけである。しかし、そもそも前政権による合意が選挙を経て翻るケースはよくあることだ(その点で言えば、再交渉を公約に掲げたにもかかわず、あからさまに政策を後退させた文大統領に対して本サイトは批判的ですらある)。たとえば、言うまでもなくアメリカは、TPP離脱を公約にしたトランプ政権が誕生しTPP参加を白紙にした。そのとき、安倍政権はトランプ政権に強行に反発したのか。否だ。
メディアがなすべきことは、政権に付和雷同することではなく、安倍政権のこうしたダブルスタンダード的な対応を指摘し、その裏に安倍首相による歴史修正主義の欲望があると指摘することではないのか。
五輪開会式の欠席の方針もそうだ。実際、4年前のロシアのソチ五輪では、プーチン政権の同性愛宣伝禁止法など人権問題に対する抗議として、オバマ米大統領や欧米各国の首脳が相次いで欠席したが、安倍首相は人権問題などどこ吹く風で、しれっと出席。菅義偉官房長官は記者会見で「ロシアの人権状況は注視しているが、ソチ五輪と結びつけて考えてはいない」と、“政治と五輪は切り離すべき”との講釈を垂れていた。これこそダブルスタンダードではないか。