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安倍政権を批判したら“反日”呼ばわり!SAPIOと産経が展開する“反日日本人”バッシングの異常

 産経は、国際NGO・国境なき記者団による「報道の自由度ランキング」の昨年版で、日本が72位と低クラスに位置したことについて、〈日本に対する強い偏見がうかがえる。一部の日本人による日本の評判を落とすための活動が、さらにそれを助長する〉と主張。そのうえで、〈米紙ニューヨーク・タイムズに先日、「日本でリベラリズムは死んだ」と題する記事が載っていた。日本の大学教授の寄稿である。安倍晋三首相の衆院解散から現在の選挙状況までを解説していた。といっても、随所に左派文化人らしい偏った主張がみられる〉と続けた。

 名指しこそしていないが、このNYタイムズのオピニオン(「The Death of Liberalism in Japan」10月15日)を寄稿したのは中野晃一教授である。

 だが、英文全体を読んでも、中野教授はやはり選挙と日本社会を語っているに過ぎないのだ。産経が具体的に指摘していないので「随所に左派文化人らしい偏った主張がみられる」というのがどこか検討もつかないが、もしかして〈日本の過去を美化する特有のナショナリスト的な調子で経済・軍事的に“強い”日本にしようとする安倍氏の「日本を、取り戻す」なるアジェンダを、有権者が圧倒的に支持したことなどない〉(編集部訳)と述べているところがそうなのだろうか。

 やはりどう見ても、中野教授は現実の政治状況を語っているに過ぎないのだが、こうしたごく普通の批評分析でさえ、産経の目から見れば「あぶりだす」べき「日本を貶める日本人」を示す“指標”となるらしい。極めて異常な感覚と言うほかないだろう。

 繰り返すが、想起させられるのは戦前・戦中の言論弾圧の様相だ。周知の通り、とりわけ1941年の改正治安維持法では、社会主義者や共産主義者だけでなく市民運動や反戦の言動までが「国体批判」とみなされ取り締まりの対象となった。だがこの国では、それ以前の大正期から右翼国粋主義と政体が連携するかたちで、学者たちが次々と弾圧されていったという歴史がある。
 
 たとえば、1920年の森戸事件では、東京帝国大学経済学部の助教授の森戸辰男が無政府主義者・クロポトキンについて論文を発表したところ、天皇主権説を主張する憲法学者・上杉慎吉らから攻撃を受けたのち、新聞紙法42条朝憲紊乱の項に抵触したとして休職処分となった。その後、上杉は赤尾敏、頭山満、平沼騏一郎らとともに強大な右翼団体を形成する。

 また昭和初期の滝川事件(1933年)、矢内原事件(1937年)、河合栄治郎事件(1938年)も、その背景には原理日本社の蓑田胸喜ら右翼の苛烈な攻撃があった。いずれも学者が大学から追われたり休職に追い込まれた弾圧事件だ。ほか、同時期の学者に対する弾圧では、美濃部達吉の天皇機関説事件や津田左右吉事件(いずれも著書が発禁処分にされるなど)が知られる。

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