どこまでも溢れ出てくる加計学園をめぐる疑惑と政権の隠蔽実態──。だが、懸念されるのは、こうした疑惑に対するマスコミの追及姿勢が著しく鈍っていることだ。
それを象徴するのが、すべての疑惑の鍵を握る当事者・加計孝太郎理事長が公の場に姿を見せたあの“事件”への対応だった。
暮れも押し詰まった12月28日、加計学園が運営する倉敷芸術科学大学大学院のフィギュアスケート男子・田中刑事選手が平昌冬季五輪代表に選ばれたことから壮行会が開催されたのだが、ここに、加計グループの総帥で、安倍首相の「腹心の友」である加計理事長が出席。しかも、加計理事長はこうスピーチした。
「この1年間、私ども学園にとってはさまざまなことがあったが、最後に大きな大きなプレゼントをいただいた」
安倍昭恵夫人と同じように安倍首相に徹底的に守られ、野党がどれだけ加計理事長の国会招致を求めても突っぱねられてきた、その疑惑の中心人物たる人物が取材陣の前に出てきた──。だが、マスコミはその壮行会の模様を伝えただけ。加計理事長に食い下がって疑惑を追及するような様子は、まったく報じられなかったのだ。
元横綱・日馬富士の暴行事件ではあれだけカメラを差し向け関係者を追い回している一方で、総理大臣による政治の私物化という国家的な大問題の当事者が現れても沈黙する。この落差のあいだにあるのが「忖度」であることは一目瞭然だ。
加計理事長と安倍首相の関係を考えれば、きっと加計理事長は安倍首相にマスコミの前に出ていくことを事前に相談し、安倍首相はそれを許可したのだろう。安倍首相による「加計問題などなかった」という空気づくりは、着々と進められているのだ。だからこそ、「丁寧に説明」とは口にすることがなくなり、余裕綽々たる態度で「この1年、何か良いことがあるような気がする」と語ったのだろう。
しかし、これで終わらせられるはずがない。今回取り上げた新たな問題のみならず、昨年末の特別国会では2015年8月という段階から国家戦略特区担当である内閣府の藤原豊審議官(当時)が加計学園まで出向いて面会していたことが発覚した。さらに、そもそも新設を認める4条件を満たしているかという問題や、加計学園による建設費水増しの補助金詐欺疑惑など、明らかになっていない問題は挙げ出せばキリがないほどにある。22日からはじまる通常国会では、森友問題と合わせて徹底追及を望みたい。
(編集部)
最終更新:2018.01.08 11:04