海外では興行的にも批評的にも非常に良い成績をおさめ、今年8月に鳴り物入りで日本公開されたアメコミヒーロー映画『ワンダーウーマン』。しかし、日本国内では期待されていたほどの成功を得ることはできなかった。
その原因のひとつと目されているのが、日本版イメージソングの存在である。
映画ではガル・ガドットが演じたワンダーウーマンはアメリカでは女性解放運動のアイコンとして半世紀以上の長きに渡り親しまれてきたキャラクターである。しかし、そんな『ワンダーウーマン』の日本版イメージソングとなった乃木坂46「女は一人じゃ眠れない」は、映画が伝えようとするメッセージとは真逆を行くものだった。
〈女は/いつだって/一人じゃ眠れない(恋が邪魔をしているよ)どうする?/感情が動いて眠れない(胸のどこかが叫んでる)寂しくなんか/ないないない/誰かといたい〉という女性蔑視的な歌詞には『ワンダーウーマン』を愛する映画ファンやアメコミファンから怒りの声が多く寄せられた。
その筆頭が、映画評論家の町山智浩氏。彼はツイッターに〈『ワンダーウーマン』のイメージソングとして「強がり言っても女はしょせん男がいなきゃダメなのよ」という歌を男が作り、女に歌わせる悪夢〉と投稿。怒りを滲ませていた。
結果的に『ワンダーウーマン』は、「大コケ」とまではいかないものの、海外ほどの成功をおさめることはできなかった。その失敗の一翼にはこの日本版イメージソングの存在が間違いなく関係しているだろう。
【事件3】欅坂46「月曜日の朝、スカートを切られた」に痴漢被害者から抗議
女性蔑視的な歌詞が炎上したのは『ワンダーウーマン』イメージソングだけではない。
7月にリリースされた欅坂46のアルバム『真っ白なものは汚したくなる』に収録されている楽曲「月曜日の朝、スカートを切られた」も批判を浴び炎上した。
「月曜日の朝、スカートを切られた」は、〈どうして学校へ行かなきゃいけないんだ/真実を教えないならネットで知るからいい〉と、社会の仕組みや大人に対して反発や疑問をもっている少女が、タイトル通り月曜日の朝の通学電車でスカートを切られ、さらなる絶望の淵に立たされるというストーリー。この作品で最大の問題は、痴漢被害を受けた主人公が〈私は悲鳴なんか上げない〉と歌っており、性被害を受けた被害者が抑圧を強いられる状況を肯定するような内容になっているということだ。
これに対し、実際に満員電車でスカートを切られた被害の経験のある女性がネット署名サイト「change.org」に〈この曲をテレビで紹介しているときに嫌な思い出が蘇り電車に乗るのがまた怖くなりました。(中略)たくさん傷ついている人がいる中でこんな曲を出すのは不謹慎だと思います〉との文章を投稿。賛同者も多く集まり、問題を指摘する声がネット上に溢れた。