山口氏と安倍首相の関係が「取材者と被取材者」というようなものでないことは、それこそ山口氏の著書『総理』を見れば明らかではないか。そもそも、執務室での写真をジャーナリストに使わせることも異例だが、中身を読んでも、山口氏が安倍氏の自宅や外遊先のホテルの客室にもしょっちゅう出入りするシーン、第一次政権崩壊後の2008年から安倍や昭恵夫人と定期的に登山をしていたエピソード、さらには、内閣人事案や消費税をめぐってメッセンジャー的な役割まで果たしていたことを、山口氏自らが自慢げに語っている。それを「取材対象として知っている」とは、開いた口がふさがらない。
事件についても同様だ。福島氏がレイプ事件ということを配慮して、山口氏や被害者である伊藤詩織氏の名前などは出すことがなかったため、安倍首相はそれを逆手にとる形で、「それはどういう案件ですか?」などとおとぼけ。「いずれにせよ個別の事案について総理大臣としてお答えすることは差し控える」と事件そのものを認識しているかどうかさえ答えることはなかった。
こうした姿勢は安倍首相だけではない。1日の法務委員会でも、民進党の柚木道義議員が質問に立ち、逮捕状執行停止命令を出していた中村刑事部長(当時)や、責任者である国家公安委員長に国会での証言を求めたが実現しないこと、さらにレイプ事件の捜査プロセスと、山口氏を不起訴にした検察審査会の公正性について質問した。
しかし自民党の平口洋委員長は「一般人の個別の案件にして議論するのは控えていただきたい」と質問を遮り、審議をストップさせている。
柚木議員はこれに対し「山口さんだけ特別なんですか? 安倍さんのお友だちだからですか? 他の委員会では(一般人の個別案件も)認めている。開かれた司法なんじゃないですか安倍政権は?」と抗議するも、「一般私人の個人名をあげることは」と委員長に拒否される場面もあった。
その後も柚木議員は「なぜ中村格刑事部長は逮捕直前に停止命令を出したのか不透明極まりない」「(山口氏を)不起訴にした検察審査会の審議経過がブラックボックス」「森、加計問題に加え、山口レイプ事件は“隠蔽3点セット”だ」「(捜査中止を)総理に相談報告したのか」など安倍首相の関与についても追及。しかし「個別の事件捜査にあたって総理に相談することはない」などの木で鼻をくくったような官僚答弁に終始した。