たとえば、2015年9月に『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ)に菅義偉官房長官が出演した際には、福山雅治と吹石一恵の結婚について、こう語っている。
「ハハハ、ほんとうよかったですよね。結婚を機に、やはりママさんたちが、一緒に子どもを産みたいとか、そういうかたちで国家に貢献してくれればいいなと思っています。たくさん産んでください」
このとき、福山と吹石は結婚しただけで、妊娠はしていない。結婚と聞いてすぐに出産を当然のように前提とすること自体が批判されるべきだが、それ以上に、子どもを産むことを「国に貢献」することだと明言してしまう神経を疑わざるを得ない。つまり、女は「産む機械」であり、子を産まない女は「国家に貢献」しない“役立たず”だと考えていることがよくわかるエピソードだ。
また、安倍政権は、2013年から国の予算を使って都道府県による婚活支援、いわゆる「官製婚活」を進めている。一方、国会では“家族はこうあるべき”と押し付ける制度「家庭教育支援法案」を提出する予定だ。こうした動きは、国家による個人生活や家庭への介入であり、先に述べた戦時下の体制とそっくりである。
挙げ句、昨日開かれた自民党役員連絡会では、山東昭子・自民党元参院副議長が「子供を4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか」と発言したというのだ(朝日新聞デジタルより)。
子どもを多く産んだ人は政府が表彰し、子どもをもたない世帯へは増税する──。「少子化対策」という名のもとに実行しようとしているのは、「子をもうけない」ことが何かに違反しているかのように増税で処罰するというかたちをとることで、子をなさないことを非難対象にすることなのだろう。
下劣極まりないこの増税案には今後も強く反対していきたいが、それにしても、この国はついに、こんなところまで来てしまったのだ。まさに「どん底」政治と呼ぶべきだが、ここから這い上がることははたしてできるのだろうか。
(田岡 尼)
最終更新:2017.11.23 08:57