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4人以上子どもを産んだ女性を表彰し、子どものいない世帯は増税! 安倍政権のあまりにグロテスクな少子化対策

 その上、腹立たしいのは、この増税案の目的が少子化対策であるだろうことだ。さんざん指摘されつづけているように、少子化を食い止めたいと本気で考えているのならば、まずは待機児童問題の解消をはじめ、女性が仕事と育児を両立しやすい環境づくりや、男女ともに不安定雇用や長時間労働の見直し、男性の育児参加、選択的夫婦別姓制度の導入、さらに未婚でも産みやすい社会──男女の賃金格差の是正、同棲や事実婚に法律婚と同様の保護を与える──などを押し進めるのが筋だろう。

 にもかかわらず、そうした必要な整備とは逆行する決定をおこなってきたのが安倍政権だ。2017年末までに待機児童を解消するという公約はあっさり破られ、非正規雇用は増加の一途を辿り、国会で上程予定の「働き方改革関連法案」では、時間外労働の上限規制は過労死ラインの月80時間を超える「月最大100時間未満」。こうして「まずやるべきこと」からどんどん離れた上、「増税対象となるなら産もうという人も増える」などと本気で考えているのだとしたら、まともな政治とは到底言えない。

 だが、もっと恐ろしいことがある。人権を蹂躙する増税案を打ち出そうという安倍政権の「少子化対策」が、戦時中の「産めよ殖やせよ」「産児報国」とよく似ていることだ。

 戦時体制下の1941年、政府が閣議決定した「人口政策確立要綱」では、人口増を目指すべく、上昇中だった平均婚姻年齢を3年早め、21歳ごろには結婚し、夫婦あたり平均5人を産むという目標を立てた。そこで実施されたのは、公営機関による結婚の斡旋(現在の婚活サービス)や学校での母性教育、子どもが多い家庭への優遇策、そして個人主義を不健全な思想として排除することだった(参考:荻野美穂『「家族計画」への道─近代日本の生殖をめぐる政治』岩波書店)。

 この「人口政策確立要綱」が閣議決定されたあとの朝日新聞(1941年1月23日付)には、こんな文言が躍っている。

〈従来の西欧文明に蝕まれた個人主義、自由主義の都会的性格がいけないのだ。自己本位の生活を中心にし子宝の多いことを避ける都会人の多いことは全く遺憾至極である〉

 個人主義を自己本位だと叩くあたりは、安倍政権を熱烈に支持し伝統的家族の復権を謳う日本会議系の極右論壇人とまったく同じだが、こうした「産めよ殖やせよ」の思想は安倍政権が継承しているものだ。

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