いずれにしても、協会の対応も新証言も客観的に考えれば疑問だらけなのだが、ほとんどのメディアは相撲協会の意を汲んで、貴乃花叩きの印象操作の報道を展開している。
そもそも、この暴行事件を隠蔽していたのは相撲協会だけではない。メディアも同じだ。
というのも、スポニチのスクープ前から、日馬富士の暴行事件については相撲記者たちのあいだでは周知のことだった。スポニチのスクープが出た14日の『とくダネ』(フジテレビ)で、横野レイコレポーターがこう口を滑らせていた。
「初日に取材に行きましたが、この話題でもちきりでした。巡業中の出来事は、相撲関係者も、記者のあいだでも、殴ったらしいね、っていう話にはなっていたんですけど」
「ほとんどの方は知っていました。協会の関係者も知っていましたし、我々マスコミも、知っていましたね」
相撲取材歴が長く相撲協会に近い横野レポーターはこのあと、「なぜほかの新聞は書いていないのに、スポニチが書いたのか」と暗にスポニチと貴乃花親方を非難するのだが、おかしいのは貴乃花親方やスポニチでなく、暴行事件を知っていながら報じないメディアのほうだろう。
最近相撲人気も盛り返してきていることから協会の機嫌を損ねたくないというのもあるし、長年相撲記者をやっているような人は意識が相撲界の内輪に組み込まれてしまっている。
メディアは普段、相撲協会の隠蔽体質を批判しているが、自らもその隠蔽の一翼を担っているのだ。メディアまでがこういう体質なのだから、相撲協会から暴力体質や隠蔽体質がなくならないのも、当然というべきだろう。
(時田章広)
最終更新:2017.11.18 01:19