例えば2001年、SMAPの稲垣吾郎が道路交通法違反、公務執行妨害で逮捕された際、報道を控えるという方針を打ち出したテレビ朝日に対し、梨元氏が「それはおかしい」と反発。その結果、番組をボイコットする事態に発展した。また2006年には静岡朝日テレビの番組担当者から「ジャニーズ事務所に関する話題を取り上げないでほしい」と言われ、激怒して番組を降板したこともある。
ところが、弟子の井上は全く逆で、売れっ子になるにつれて、芸能事務所や大物芸能人とどんどん癒着を深めていった。梨元はその井上の姿勢が我慢ならず、数年後、袂を分かったというのは有名な話だ。
しかし、当の井上はむしろ、阿川との対談で、この梨元との対立のエピソードを紹介しながら、まるで自分のスタンスのほうが正しいかのように、こう語ったのだ。
「(梨元事務所に)二十九歳の時から、五、六年お世話になりました、芸能レポーターになるきっかけを作ってくださった恩人です。ただ、最後はちょっと意見が合わず……」
「梨元さんはレポーターが芸能プロダクションやタレントさんと親しくなるのは良くないという考え方だったんです。逆に僕は親しくなって何が悪いの? っていう思考。癒着と密着は違うと思っていて、癒着はまずいけど密着しないと本音も引き出せないだろうと」
井上氏の言う“密着”と“癒着”の差が全然分からないが、要するに取材対象とは親しくする、そして真相が分からなくても面白ければいい、というのが井上氏の芸能レポーターとしてのスタンスらしい。
実際、井上はこの対談のタイトルにもなっているように、「会見はエンターテインメントの場。真相が明らかにされなくても、唸らせてもらえばいい」なんてことまで語っている。
なんとも、唖然とする開き直りぶりだが、しかし、これは井上一人の問題ではない。今、ほとんどの芸能レポーターは芸能プロの意図を伝える伝書鳩的存在になっている。
「大手芸能プロの言い分を垂れ流す一方で、弱小プロのタレントは徹底的にバッシングを加える。こういう“弱い者イジメ”は、テレビ局が求めているものでもある。芸能ゴシップで視聴率を稼ぎたいけど、かといってつきあいの深い大手プロのタレントを批判できない。そういうテレビ局にとって、大手とベッタリ癒着している井上のようなレポーターはすごく安心できる存在なんです。だからそういうレポーターばかりが重宝され、増えていく」(ワイドショー関係者)
「真実には興味がない」「取材対象とは親しくする」――。そんなことを公言する人物が我が物で闊歩する今の芸能ジャーナリズムの惨状を草葉の陰で梨元勝はどう思っているのだろう。
(林グンマ)
最終更新:2017.12.07 04:50