性犯罪に手を染めてきた男こそ実は「弱い」存在で、弱いからこそ自分よりも弱い存在を貶めることしかできない。本当の意味で未熟で弱いのは彼ら加害者だ、と彼女はいう。このように折り合いをつけることで、以前のようなフラッシュバックなどからも解放されてだいぶ楽になったというが、しかしだからといってすべてが終わったわけではない。この心の傷は一生続いていくもので、加害者の罪が消えるわけではない。
〈しかし、いくら犯人の心の傷が弱さだと理解したって、心からは許せる事ではないのだという事も知った。加害者にどんな理由があろうとも、心から許す事は、やはり難しい〉
彼女は自伝のタイトルを『よわむし』と名付けたが、その題の意味をウェブサイト「ダ・ヴィンチニュース」のインタビューでこのように語っている。先に述べたように本当の「よわむし」は弱い立場の人間を襲うことでしか自らの欲望と向き合えない加害者のほうであり、また、性犯罪被害を正しく認識し受け止めることのできない社会であるということを表したタイトルなのだという。
「よく『これってあなたのことですか?』って聞かれるんですが、そうではないんです。犯人もそうですし性犯罪が起こる、女性の性に対して理解のない社会の弱さが、被害者を生み出しているのだということを言いたくてつけました」
安倍政権御用ジャーナリスト・山口敬之氏のレイプ揉み消し疑惑を告発した詩織さんに対し、「会見のときに胸元が開き過ぎ」などといったセカンドレイプが平気でネット上に溢れる。そんなグロテスクな状況だからこそ、この大塚の本は広く読まれるべきだ。
(新田 樹)
最終更新:2019.12.18 06:58