また、有森氏は、五輪の裏でうごめく“利権”や“政治”についても、示唆した。
「昔からオリンピックは政治は関わらない、純粋なものだと言われますが、そんなこと信じている人はこれっぽっちもいないと思いますよ。ロビー活動をしていると、政治力や、どんな人が関わっているとか、お金とか。そうしないと組み立てられない現実をみんながわかっている。本当に裏、裏、裏、汚い、汚い」
「みなさん、開催するにあたってもっと興味をもってほしい。お金の感覚とか、ものの進め方。東京だけでなく全国にしわ寄せがきますから。無関心であってほしくない。怒るところは怒ってほしい」
五輪の“現実”について、もっと批判の声をあげてほしい、有森氏はそう語るのだ。
オリンピックに対する批判が言いにくい空気のなか、しかも当のアスリート側からこのような批判が出てくるのは意外なようにも感じる。しかし、有森氏のこうした主張は、アスリートだからこその思いだ。ラジオのなかでも語ったように、有森氏は五輪招致にアンバサダーとして関わり、また日本陸上競技連盟理事も務める“当事者”だ。だからこそ、自分の目の前で当初の理念がどんどん捻じ曲げられていくのは耐えられなかったのだろう。
実際、2015年に新国立競技場の巨額建設費とその見直しが大きな話題になった際も、「ほとんどのアスリートが言いたいこともあると思うし、意見もあると思う」としながらも、しかし多くの現役選手たちは所属する協会に対し「触発するようなことはできない」と後輩アスリートたちの苦しい心中を涙ながらに代弁していた。
オリンピックに関わった者だからこその苦言と、“社会ファーストであるべき”という問題提起。「オリンピックのために、ひとつになれ」と大号令がかかるいま、有森の言葉にもっと多くの人が耳を傾けてほしい。
(伊勢崎馨)
最終更新:2017.12.06 06:06