しかし、いずれにしても吉本が会社をあげて、法務省のPRをやることが、とんでもない話であることには変わりはない。
芸人がお笑いしかやっていなかったかつての吉本なら、別に目くじらをたてるほどのことではなかったかもしれない。しかし、現在の吉本はニュースを扱うワイドショー、情報番組にMC、コメンテーターとして大量の芸人を送り込んでいるのだ。
『スッキリ!!』(日本テレビ)には加藤浩次と近藤春菜(ハリセンボン)、『ビビット』(TBS)には千原ジュニアと中田敦彦(オリエンタルラジオ)、『バイキング』(フジテレビ)にはブラックマヨネーズと小籔千豊とフットボールアワーと横澤夏子と雨上がり決死隊、『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ)には高橋茂雄(サバンナ)と川島明(麒麟)と斎藤司(トレンディエンジェル)、そして、『ワイドナショー』には松本人志と東野幸治……。全国放送の主なワイドショーだけでもこれだけの芸人が出演している。関西やその他のローカル番組、インターネットやラジオなども含めれば、その数倍にものぼるだろう。
しかも、こういった番組で、彼らは芸能ニュースや街ネタだけでなく、それこそ共謀罪をはじめとする政府の政策、政権の不祥事や選挙などに対してもコメントをするようになった。そして、彼らが発した言葉は、しばしばネットニュースにも取り上げられ、番組視聴者以外にも広く拡散されていく。
少し前、ネトウヨたちが「泉放送制作という制作会社が、日本のテレビを牛耳り、反安倍番組をつくり、世論誘導している」という荒唐無稽なデマを拡散していたが、吉本こそいまや、その気になれば、世論誘導も可能なほど大きな力を有しているといっていい。
そんな会社が金をもらって社をあげて政府のPRを引き受けたらどういうことが起きるのか。ただでさえ、空気を読むのに長けた芸人たちは、権力に迎合する傾向が強い。「会社がPRやっているんだから、批判は控えておこう」という話になるのは目に見えている。
賭けてもいい。この後、法務省が問題のある法律を出したり、不祥事が勃発したとしても、ワイドショーに出演している吉本芸人たちは批判的なコメントをほとんど口にしないだろう。中には、無理やりにでも法務省を擁護したり、批判勢力を攻撃するような芸人も現れるかもしれない。