ただ、こういった差別に関する問題は白鵬だけのものではない。他の外国人力士にも向けられているものでもある。
とくにひどかったのが、今年3月、モンゴル出身の大関・照ノ富士に対し、観客から「モンゴルへ帰れ」とのブーイングが浴びせられた事件だ。
この大相撲春場所は、稀勢の里がケガを押して劇的な逆転優勝をおさめ、大きな注目を浴びたものとしても記憶に新しいが、その稀勢の里と優勝を争っていた大関・照ノ富士と関脇・琴奨菊との取組で騒動は起きた。
左膝にケガを抱えた状況で臨んだこの一戦で照ノ富は立ち合いで変化、はたき込みで琴奨菊を破ったのだが、この内容を受けて観客は大ブーイング。「そこまでして勝ちたいんか」といった罵声が飛んだ。そのヤジのなかには「金返せ」「勝ったら何でもいいんか」というものに加え、「モンゴルへ帰れ」というヘイトスピーチそのものまであったという。
たとえ取組の内容に不満があったとしても、「モンゴルへ帰れ」という差別ヤジが許されるはずがない。そもそも、照ノ富士にこれだけ強いヤジが飛び交ったこと自体に、差別的な側面がある。というのも、千秋楽で稀勢の里は照ノ富士に対し立ち合い変化を見せて勝利しているが、これには前述のような怒号は飛ばなかったからだ。
また、この問題に関してはメディアによる報道もひどかった。照ノ富士と琴奨菊の一戦を報じたウェブ版のスポーツ報知は、なんと「照ノ富士、変化で王手も大ブーイング!「モンゴル帰れ」」と見出しをつけて報じた。
ヘイトスピーチのヤジを好意的に受け止めているとも読めるこの見出しには批判が殺到。津田大介氏もツイッターで〈法務省がガイドラインとして「アウト」と示しているのにそれを否定せず(何なら肯定的な文脈で)見出しに使う報知新聞が一番アウトではこれ……。「美しい国」だよまったく。〉と苦言を呈するなどしていた。