たしかに、“長い滑走路の民間施設を米軍に使用させる”条件や那覇空港使用の可能性について、これまでの防衛大臣は誰一人、言及しなかったし、「整わなければ、返還とはならない」というような発言は一切してこなかった。
稲田防衛相自身も今年2月、マティス米国防長官がはじめて会談したあとに行われた共同記者会見で、「普天間飛行場については辺野古への移設が唯一の解決策であるという立場を、今回あらためてマティス長官との間でも確認し、政府として移設に向けた工事を着実に進めていく考えであります」と述べ、「辺野古が唯一の解決策」というのは日米間の一致した考えであることを強調。この前提条件のことはおくびにも出さなかった。
「実際、沖縄県もこの前提条件について『これまで説明を受けていない』と激怒しています。政府は仲井眞弘多知事時代に説明したと主張していますが、メディアに対しても“長い滑走路の民間施設を米軍に使用させる”という条件については、ほとんど説明らしい説明をしていない。条件に文言だけ記載しておいて、そのことには触れない、というのが日米間の暗黙の了解だったのではないでしょうか。ところが、森友問題で追及を受けて以降、すっかり集中力を欠いている稲田防衛相がポロリとしゃべってしまった。2プラス2の延期の理由がそうかどうかはわかりませんが、米側が何をやってるんだと激怒するのは当然でしょうね」(沖縄地元紙記者)
稲田防衛相は7日の記者会見で慌てて「国会での答弁も、普天間飛行場の返還が実現するように、しっかりと対応していくという趣旨を述べた」と弁明したが、もはや手遅れだ。密約があろうかなかろうが、この条件があるかぎり、沖縄にとっては、那覇空港の提供など新たな犠牲を強いられるか、普天間が返還されないか、どちらかしかないということだ。「辺野古が唯一の解決策」が嘘であり、辺野古新基地を建設しなければならない理由なんてどこにもないことが明らかになってしまったのである。
しかし、信じられないのは、辺野古と普天間をめぐって日本政府のこれほど大きな裏切りが明らかになったにもかかわらず、「本土」の大手メディアはこの答弁について一切取り上げていないことだ。どれだけ稲田防衛相に批判の目が向けられても、沖縄の問題にはタッチしない。──あらためて、「本土メディア」の沖縄に対する無関心・無責任ぶり、そして根本的な部分での対米従属姿勢が露わになったと言えるだろう。
(編集部)
最終更新:2017.12.05 07:21