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藤井聡太四段の影で…プロ棋士めざす子どもたちが直面する壮絶な現実! 挫折して精神を病む者、新興宗教に走る者も

 しかも、プロ棋士を目指す子どもたちの中には、将棋に集中するために高校に進学しない者も少なくない。実は藤井四段もそういう選択をするのではないかともいわれている。「週刊女性」(主婦と生活社)2017年7月11日号で、藤井四段の母・裕子さんがこう語っているのだ。

「今はすべての時間を将棋の勉強にあてたくて、学校に行く時間ももったいないみたいです。今日も『学校に行きたくない』とブチブチ文句を言っていました。高校進学についてはどうなるのでしょうか……。心配です」

 藤井四段の場合は、すでにプロとなり、かつ栄光をつかんでいるからまだしも、まだプロになれていない子どもたちにとっては、その選択によってさらに追い詰められる結果になることも少なくない。再び『将棋の子』から引こう。

〈当然のことながら彼らに定職はない。月に2度の奨励会だけが、唯一の決められた仕事のようなものである。それ以外での主な仕事は対局の記録係。それは、月に10局以上も採る者からほとんどといっていいほど採らない者まで人それぞれである。
 高校へ通わない奨励会員はたいていは金がなくて暇ばかりという状態に陥りかねなかった。
 高校生くらいの年齢で暇というのは、それはそれで自分の生活を律するのに大変な意思力が必要となってくる。学校も行かずに、毎日毎日朝から晩まで将棋の研究に没頭するというのは至難の業といえるだろう。高校生くらいの年齢で通う場所もなくまったくのフリーの状態でいるというのは想像以上に大変なことなのである〉

 もっとも、プロ棋士として目ざましい活躍をしながらしっかり高校も卒業した羽生善治の登場以降、奨励会でも高校に進学する者が増えているという。『将棋の子』も、高校への進学は適切な生活リズムの獲得と、精神安定につながるため、将棋にも好影響を与えるとのと指摘をしている。

 しかし、いずれにしても、若くしてプロ棋士を目指すことが子どもたちにとって過酷で、壮絶であることには変わりはない。『将棋の子』にはこんな印象的な一節があった。

〈彼らは一様に心のなかに氷の塊を抱えている。それは、もしかしたら自分は将棋のプロになれないのではないかという不安であり、たった一局の練習将棋ですら大きくなったり小さくなったりを繰り返すのである。〉

 その是非について論じるつもりはないが、世間が藤井四段の快進撃に快哉を叫んでいる裏で、同世代の子どもたちが、この氷の魂を抱えながら、苦闘を続けていることはわかっておくべきだろう。

最終更新:2017.12.06 03:36

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