前川氏が通っていたとされる出会い系バーには「週刊文春」(文藝春秋)「週刊新潮」(新潮社)「FLASH」(光文社)などさまざまな週刊誌が取材をかけ、女性や店員の証言を具体的に集めているが、どの週刊誌も前川氏の買春の事実を突きとめられていない。ところが、須田氏だけが「裏を取った」として、前川氏の買春行為を主張しているのだ。
しかし、この番組で須田氏は何一つ、証拠らしい証拠を提示していないのだ。前出の週刊誌はバーの写真などを掲載しているが、須田氏は写真すら出していない。須田氏の話にディティールがあるとすれば、「歌舞伎町の寿司屋の脇、道入っていった右側にある(ピー音)」という部分だけだが、歌舞伎町には目立つ場所から路地裏まで何十件もの寿司屋があり、ラブホテルにいたってはひしめき合っているようなエリアだ。辛坊氏は「あるあるある!」とはしゃいだが、そりゃあるだろうよとしか言いようがない。
この須田氏のやはり“トバシ”のにおいのプンプンする発言は当然、古くから須田氏のことを知るジャーナリストたちから厳しいツッコミを入れられた。江川紹子氏は〈須田さんって、オウム事件の時に、教祖の麻原彰晃こと松本智津夫がいるはずもない京都のホテルで会ったとかって、ありえないことを平然と言って回ってテレビに露出しまくった、あの須田さんですか?〉とツイート。
ヤクザ問題に詳しいジャーナリスト・西岡研介氏もこれに乗っかって、〈須田さんって、山口組分裂の際にもデタラメな情報ばかり流していたあの須田さんですよね?〉と追い討ちをかけた。
まあ、須田氏についてはいつものことなので驚かないが、驚いたのはやはり、天下の総理大臣がこのタイミングで、こんなジャーナリストの番組に出演したことだろう。次から次へと疑惑が噴出して追い詰められ、安倍応援団なら誰でも、という感じでオファーに飛びついたのだろうが、ちょっと露骨すぎる。しかも、この番組で安倍首相はその須田氏と一緒に、前川氏に対してこんな子供みたいな攻撃を展開したのだ。
「前次官が私の意向かどうかということはですね、確かめようと思えば確かめられるんですよね」
「課長だったら確かめようがないと思いますが、次官であればですね、どうなんですかと。大臣と一緒に私のところに(確認に)来ればいいじゃないですか」
まったくどの口が言っているのか。今月1日、外務省は韓国・釜山の森本康敬総領事を退任させるという人事を発表したが、その理由はなんと〈私的な会食の場で安倍政権の対応を批判したことを、首相官邸が問題視〉(朝日新聞デジタル1日付)したからだ。会食中に政権批判しただけでそれを理由に更迭してしまうのに、「文句は面と向かって言え」とはちゃんちゃらおかしい。そもそも、直接には何も言わなかったという前川氏にさえ、公安出身の杉田和博内閣官房副長官から“出会い系バー通い”を厳重注意させ、監視下にあることを匂わせて恫喝していたのだ。もしも前川氏が安倍首相に直接「やり方おかしくないですか?」と言った日には、一体どんな粛清が待っていただろう。