「Silly Game」のリリースにあたっての公式資料に彼は、「昨今、世の中に対する違和感を感じることが多くて。自分たちのルールを押しつけてくる感じに辟易することが多かったんです。芸能人の出家騒動とか過労の自殺騒動などに対して正論を振りかざす感じ、その優しさの無さ、無言の圧力、そういうものに気持ち悪さを感じていて」とコメントを出しているが、まさしくその思いを作品として具現化させていると言えるだろう。
このなかに含まれる、〈大将、売ってくれその名誉〉の〈大将〉は「大賞」と掛けていることは明白で、このラインで昨年のレコード大賞1億円買収騒動を皮肉っているとも読めるが、SKY-HIもエイベックス所属のアーティストであることを考えると軋轢を生み出しそうな歌詞である。
とはいえ、だからといって、彼は恐れて口をつぐんだりすることはなかった。ツイッターではこのように綴っている。
〈新曲含めて、社会や政治に対して発言する時は、違う主張や人種の人が聴くことも想定するから気を使うし、単純に「お、怒られるかな〜」みたいな不安もあるけど笑、それで捻じ曲げる事はしないです。〉
彼はウェブサイト「T-SITE」のインタビューで今後の方向性についてこのように話していた。
「今は目先の問題がめちゃくちゃ目に付くんですよ。だから次のアルバムはひょっとしたらポリティカルになるのかな」
SKY-HIはそもそも、「AAAの人でしょ(笑)」であったり、「所詮はアイドル」といった偏見を、きちんとした音楽をつくり続けることでひとつずつ拭い去り、ミュージシャンとして確固たる地位を自ら切り開いてきた人である。
AAAが好きな若い女子から、ゴリゴリの日本語ラップヘッズまで、幅広いファン層をもつ彼が「自主規制」にアンチテーゼを唱えたことの意義は大きい。ポリティカルな内容になる次のアルバムはどんな内容になるのか、そして彼のファンはそれをどう受け止めるのか。期待して待っていたい。
(新田 樹)
最終更新:2017.12.04 03:45