そこで彼女たちは別の稼ぎ方を考えるしかなくなってくるのだが、そこで立ちはだかる壁がある。
〈ここで、彼女たちは身動きが取れなくなります。風俗の仕事は、中年期以降に対する「お土産」をくれません。新しい仕事をしたくても、履歴書を真っ白なまま提出するしかない。身についたスキルもない。アスリートと違って、人におおっぴらにいえるキャリアでもありません〉(『風俗嬢の見えない孤立』、以下すべて同じ)
「アリバイ会社」という、源泉徴収票を発行するなどして昼の仕事をしていたかのように見せかけてくれるサービスもあるにはあるが、それも限界がある。
また、角間氏はGAPの仕事として風俗嬢たちの再就職支援に関わる活動をしていくなかで気がついたことがあるという。それは、彼女たちが強くもっている「風俗嬢である(であった)ということを周囲に知られたくない」という気持ちだ。
前述したGAPによる15年度のアンケートデータでは、「知られてもいい」と答えたのが9人に対し、「誰にも知られたくない」と答えたのは201人にものぼる。
その「知られたくなさ」を端的に示すのが、彼女たちの休日・非稼働時の過ごし方だ。15年度のGAPアンケートデータによれば、28歳〜32歳の風俗嬢のうち、非稼働時には「特に何もしない」と答えたのは69人中25人。「育児、家事など」や「昼職勤務」と答えた人を超えた最大回答である。
では、その「特に何もしない」の間、彼女たちは何をしているのか? そこを深掘りすると、友人と遊び回っていたりと充実した余暇を過ごしている人は稀で、「だらだらYouTube見てる」や「パズドラしてる」といった回答が大半。引きこもりがちな生活なのである。「若者の外出離れ」といった報道がなされる昨今。こういった余暇の過ごし方は別に特殊なことではないようにも思えるが、角間氏は彼女たちから話を聞くなかで、そういった一般的な「若者の外出離れ」とはまた違った側面を見る。
〈なぜ彼女たちは「何もしない」のでしょうか?
理由の一つは、やはり「立場を開示しづらいから」です。遊ぶにしろ働くにしろ、自分の立場を一切開示せずに関われる場は多くありません。「普段何してるの?」と聞かれる度に口ごもらなければならない状況はどうしてもストレスがたまる。そのストレスを避けるために、家に引きこもってしまうわけです〉