悪いことは重なるもので、15年9月には、濱野がゲスト出演したトークイベントで失言を放ち大炎上を巻き起こす。彼は「アイドルってクソだなってわかったんで」と吐き捨てながらこのようにグループの内情を語ったのだ。
「僕、最近、グループアイドルってないな、と思ってきた。自分でつくってみてわかったんですけど、ある年頃の女性を集団でまとめると、まあ、ろくなことがない。嫉妬、妬み、いじめ、陰湿な何々、もうね、はっきり言って、マネジメントなんてできませんよ。『勝手にいじめとかやってろ!』とかなるんですよ、正直」
「アイドルグループの運営を1年ぐらい前から始めて思ったんですけど、これをまともなビジネスにしようと思ったら、ヤクザになるしかない。ウチのグループってメッチャ辞めていくんですけど、辞めさせなくなかったらヤクザになるしかない」
本稿冒頭の「アイドルはもちろんクソなんかじゃありません! 僕がクソなだけです!」という謝罪は、まさにこの炎上発言のことを指している。
そんな状況のなか、15年10月にユニバーサルミュージックから発売されたメジャーデビューシングル「僕を信じて」は芳しい成績を残せず、16年のはじめには残っていたメンバーの多くも卒業していき、PIPは実質的な解散状態に陥ってしまう。そして、濱野はSNSの更新も止め、アイドル業界からも批評界からも消えてしまったのだった。その間は関係者も連絡がつかなかったという。
それから1年近くの時が経ち、ようやく濱野本人によるPIP失敗の総括と反省と謝罪が始まった。ニコ生の放送『濱野智史の告解と懺悔──PIPとは何だったのか』は、その本格的なものの第一弾となる。濱野は社会学者として、そしてアイドルプロデューサーとして、PIPの活動をどうまとめるのか、多くの人々が注目して放送を見守ったのだが、内容は少し肩透かしだった面は否めない。
ボサボサの髪、ヒゲも伸びた状態でカメラの前に座った濱野は、とにかく自分にはマーケティングの才能も、クリエイターとしての才能も、マネジメントの能力もなかったと、徹頭徹尾自分を卑下する。
会計管理ができておらずスタッフにもボランティアで仕事をお願いしていた局面が多くあったこと、音楽に関する素養がなかったため質の高い楽曲を生み出すことができなかったこと、自らのアンガーマネジメントができておらずメンバーを怒ったあとのケアを十分にしていなかったこと──。彼は徹底的に自分のいたらなさを責め続けながら振り返る。