『FLOWERS』
レディー・ガガ、メリル・ストリープ、マドンナ、テイラー・スウィフト、……アメリカでは、多くのアーティスト、ミュージシャンがトランプの排外主義、差別主義にNOをつきつけている。一方、日本で、たとえば、安倍政権が憲法改正に本格的に乗り出した時に、ああいうふうに声をあげる者ははたしているのだろうか。
何度も指摘しているように、この国のメジャーなアーティストたちは「音楽に政治を持ち込むな」という圧力に押されて、ほとんど政治的な発言をしなくなっている。
しかし、けっして大きな声ではないが、きちんというべきことをいい続けているアーティストも何人かはいる。山崎まさよしもそのひとりだ。
意外に思うかもしれないが、山崎は3年前に出した『FLOWERS』というアルバムで憲法9条について歌っているのだ。
それは、『FLOWERS』の5曲目に収録されている「#9 story」という楽曲。全編英語で歌われるこの曲は、毎晩子守唄代わりにお母さんに本を読んでもらっている子どもの目線から歌われる。ある日突然お母さんがいつも読んでいる本のストーリーを変えたことにより、彼は、銃をもって戦う悪夢を見るようになる。そして、「お母さん、物語を変えないで」と懇願する。そんな寓意的な歌詞だ。
憲法9条に関する直接的な言葉はないが、タイトルの「9」という字と照らし合せて読むことでリスナーは何のことを歌っているのか理解できる仕組みになっている。
なぜこのような楽曲が生まれたのか。「SPA!」(扶桑社)2013年10月8日号に掲載されたインタビューで彼はこのように答えていた。
「これはもともとクリスマスソングにするつもりだったんですけど、憲法改正の話をしてたら腹立ったんで、変えたりました(笑)。政治家が問題が何も解決してないのに足の引っ張り合いに現を抜かすなら、こっち側からのアプローチはどうあるべきかって考えたら、皮肉やメッセージを乗せた曲を作るスキルはあるわけだし、それを全国で発売できるわけじゃないですか。“いい曲”って言うときの“いい”にもいろいろあって、メッセージがあるのも“いい曲”に入るんちゃうかなと。僕が聴いてきたのも、一見普通なようだけどメッセージが隠されてたりする歌が多かったし。サイモン&ガーファンクルの「7時のニュース/きよしこの夜」とかね」