だが、古舘伊知郎をはじめとするキャスター降板騒動の話題では、たけしは諦めたようにこう言うのだ。
「まァ、オイラに言わせりゃ、「何を言ってやがるんだか」って感じだよ。テレビなんて、昔から「事実を曲げてばかり」なんだから」
「「真実を報じるのがテレビ」なんて認識は間違いで、「真実をオブラートに包んでしまうのがテレビ」ってのが本当のところなんだよな」
たしかに、昔からテレビにはたけしが言及するような問題点はずっとある。あるが、現在はほかならぬたけし自身が感じているように、さらに強い自主規制と、政治の話題、とくに政権に対する批判的意見を口にできない空気が流れている。だからこそ、たけしのような毒舌で鳴らしてきた大御所芸人でさえも、「「一億総活躍・欲しがりません勝つまでは」ってコピーにしたほうが、狙いがわかりやすかったんじゃないの(笑)」なんて軽口が「テレビじゃ言えない」状態になっているのだろう。
本書のなかでたけしは、「そのうち誰も想像がつかないような上手いやり方で、テレビの自主規制やタブーを飛び越してやろうかって考えてる」と述べている。そのことには大いに期待したいが、早く手を打たないと、この国の好戦的な首相が「一億玉砕」「一億火の玉」などと言ってもテレビがツッコまない最悪の状況は、すぐ目の前まで来ているのではないだろうか。
(大方 草)
最終更新:2017.02.07 11:25