『クローズアップ現代』旧ホームページより
トランプ大統領のメディア攻撃に注目が集まっているが、それを見るにつけ、日本の宰相はトランプの先駆けだったとつくづく感じずにいられない。トランプのようにいちいち言葉にしないだけで、この国の総理大臣は放送法をねじ曲げて解釈し、圧力文書をキー局に送りつけるなどの“攻撃”を仕掛けてきた。そして、トランプよりもっと露骨に、萎縮しないキャスターたちを次々に降板に追い込んだことは記憶に新しい。
そのキャスターのひとりが、NHKの看板番組『クローズアップ現代』のキャスターを23年間にわたって務めた国谷裕子氏だ。その国谷氏が、先日、初の著書『キャスターという仕事』(岩波新書)を出版。約1年のときを経て、ついにあの降板騒動についても言及しているのだ。
まず、国谷氏の番組降板が判明したのは2016年1月7日のことだったが、本人に降板が伝えられたのは、その約2週間ほど前の15年12月26日だったという。
「〈クローズアップ現代〉を管轄する組織の責任者から、番組のキャスターとしての契約を二〇一六年度は更新しないことが決定された旨、伝えられた。(中略)NHKから契約更新しないと言われれば、それで私の〈クローズアップ現代〉でのキャスター生活は終わりになる」
国谷氏も「体力や健康上の理由などで、いつか自分から辞めることを申し出ることになるだろうと思っていた」というが、「(契約を更新しない理由が)番組のリニューアルに伴い、ということになるとは想像もしなかった」らしい。
実際、国谷氏が降板を言い渡される1カ月前も、制作現場では来年度も国谷氏でキャスター継続と提案しており、「一緒に番組を制作してきたプロデューサーたちは、上層部からのキャスター交代の指示に対して、夜一〇時からの放送になっても、番組内容のリニューアルをしても、キャスターは替えずにいきたいと最後まで主張した」というのだ。
国谷氏の降板は「上層部からのキャスター交代の指示」によって決定した──。国谷氏は降板を告げられたとき、こんなことを考えたという。
「ここ一、二年の〈クローズアップ現代〉のいくつかが浮かんできた。ケネディ大使へのインタビュー、菅官房長官へのインタビュー、沖縄の基地問題、「出家詐欺」報道」