では、なぜこの時期に山崎会長はつんく♂にそんなことを言い出したのだろうか? 音楽業界関係者はこのように証言する。
「今回の“つんく♂ハロプロ卒業”は、彼の健康が理由ではありません。本当の理由は、つんく♂が代表取締役を務めるアップフロントのグループ会社・TNX株式会社の赤字問題です。この会社は音楽制作以外にも、お好み焼き屋や靴下、化粧品のブランド立ち上げ、アイドルカフェといった多角経営をしており、それらの垂れ流す赤字に山崎会長が腹を立てたのではないかといわれています」
そんな確執を裏付けるような記述も、前掲『だから、生きる。』には綴られている。彼が声帯の摘出手術を受けたのは、ハロプロの総合プロデューサーを降りたのと同時期である14年10月のことだったのだが、なんとその病床で彼にこんな重荷を背負わせていたのである。
〈総合プロデューサーを降りるにあたって、それまでハロー!プロジェクトの制作工房として機能していた会社を縮小せざるを得なくなった。(中略)会社の業務を縮小するにあたっては、入院中に判断しなきゃいけないこともたくさんあった。身体中にまだチューブが何本も装着され、体力的にもかなりへばった状態でスマホやPCを使ってスタッフと会話したりして、大変な面もたくさんあった〉
言うまでもなく、ハロプロが世間を席巻し、そして15年以上の長きにわたり続いてきたのは、ひとえに、つんく♂の楽曲やプロデュースがあったからこそである。
にも関わらず、こういう目にあわされるとは、つんく♂に対して同情の念を抱かずにはいられない。しかも、前述した不可解な、ハロコンにおけるつんく♂曲の大幅カットである。
つんく♂曲はいまでもファンから絶大な支持を集めている。実際、「Crystal Clear」の公演内容がネット上に流れ出すやいなや、「最悪のセトリ」との声が多く書き込まれた。公演内容を見てチケットを転売サイトにあげた人も少なからずいたようだ。
ファンはこのような不義理を敏感に察知している。昨年はチケットの高さなどからハロコンに空席が目立っていると話題になった。特に、地方での公演は客入りに苦戦していたようだが、このままではアップフロントの方がファンから「切り捨て」られることになってもおかしくない。
(新田 樹)
最終更新:2017.11.15 05:59