その状況はローカル局でも同じだ。映画評論家で、この映画を応援している町山智浩氏はツイッターでこんな内情を暴露していた。
〈のんこと能年玲奈への旧事務所および音事協の放送メディアへの圧力は「彼女を出演させるな」につきるので『この世界の片隅に』という作品そのものはいくら取り上げてもかまわないのに、テレビが全然扱わないのは単なるビビリの自主規制ですね。〉
〈「タブーなき」といわれるMXですが、大川プロデューサーが『この世界の片隅に』ののんこと能年玲奈を番組に出そうとしたんですが旧事務所から抗議があって断念しました。テレビの片隅のMXくんだりまでマメに圧力ご苦労様です。〉
昨年12月5日に放送された『あさイチ』(NHK)では、「ヒット映画の秘密」という特集のなかで『この世界の片隅に』を大々的にピックアップ。のん本人の出演こそなかったものの、彼女の写真を映しつつアナウンサーが「自然な演技が評判です」と説明し、コーナー終わりには井ノ原快彦による「のんちゃんがいいんですよね、声がね。メチャクチャ良かった」との絶賛の声を放送していた。さらに21日の放送では、のん本人が実に2年ぶりとなるスタジオ生出演もはたした。
こんな経緯もあったため、本人の出演はなくとも、資料映像ぐらいでは天野アキの姿が見られるかと思ったが、バーニングの影響力の強い紅白歌合戦の場では難しかったようだ。2016年はSMAP解散問題、能年独立問題など大手事務所によるテレビ局支配の理不尽があからさまになった1年だったが、紅白での能年排除はSMAP不在とともに、ある意味2016年の芸能界を象徴していたと言っていいだろう。
今年もこのような理不尽な圧力は続いてしまうのだろうか。しかし、『この世界の片隅に』は、興業収入8億円、観客動員も60万人を超えるヒットになっており、今月からは上映館数も大幅に増えることが予定されている。この才能で旧態依然とした芸能界の力学を突き崩してほしい。今年も本サイトは、のんを応援し続けるつもりだ。
(新田 樹)
最終更新:2017.11.15 05:42