橋下は自分とそっくりだからこそ、トランプを褒めあげる──。なんとも気持ちの悪い光景だが、しかし、これは橋下に限った話ではない。この国のリーダーである安倍首相もまた、橋下的・トランプ的な政治家であり、橋下と同じように安倍首相もすでにトランプへの同調を見せているからだ。
安倍首相とトランプの親和性については既報の通りだが、じつは前掲書でも佐藤がその点を指摘している。
同書では橋下やトランプといった大衆迎合型の新自由主義者の先駆けとしてフランスのサルコジ前大統領の名を挙げているのだが、佐藤はフランスの歴史人口学者であるエマニュエル・トッドのサルコジ論から引用するかたちで、サルコジの特徴を「思考の一貫性の欠如」「知的凡庸さ」「攻撃性」「金銭の魅惑への屈服」「愛情関係の不安定」としている。そして、「橋下徹も、トランプも(中略)サルコジの特徴のすべてが見事に当てはまります」と佐藤は明言。「トランプは「アメリカ版のサルコジ」で、安倍首相も多かれ少なかれ「ミニ・サルコジ」なのです」と話している。
以前、本サイトでは、思想家の内田樹が橋下と安倍の共通点を「幼児的で攻撃的で不寛容」「二人を駆動している政治的な情念がある種の「怨念」」「首尾一貫性を維持しなければ自分の知的誠実さが疑われると思っていない。言葉なんか、ただその場しのぎでいいんだと思っている」と分析していることを紹介した。これらはある意味、サルコジの特徴とほぼ同じであり、トランプにも当てはまるものだ。
社会から市民の連帯が失われる一方で、保守系政治家はナショナリズムと同時にマイノリティを危険分子だと攻撃し他国の脅威を煽り、メディアがそれを喧伝する。そうして不安や恐怖を駆り立てられた人びとは排斥感情を募らせ、「強いリーダー」になびく──このような流れのなかで橋下や安倍、トランプといった政治家が支持を集めているわけだが、しかし、結果として得をするのは大企業や富裕層だけ。強いリーダーたちによって、民主主義はどんどん破壊されていくだけである。
これから「似た者同士」たちは手を組み、排他的な政治を進めていくだろう。そして日本でも、橋下と安倍が手を組み、憲法改正と人権破壊に向かって動き始める。まさに恐怖としかいいようがない。
(水井多賀子)
最終更新:2017.11.12 02:11