実際、この認識の甘さを指摘する意見が、イスラエルからあがったこともある。イスラエルのハアレツ紙は2014年1月22日に、「なぜ日本人はアンネ・フランクに引きつけられるのか?」という記事を掲載したが、そのなかで“日本では第二次世界大戦中に自分たちが受けた被害にフォーカスする一方で、ナチスドイツの同盟国として残虐行為に加担した責任に知らんぷりの傾向がある”と論及している。
この記事に登場するユダヤ系フランス人ジャーナリストのAlain Lewkowicz氏によると、日本はアンネ・フランクに関する本が数多く出版されるなど、世界のなかでもアンネ・フランクへの関心がとりわけ高いという。その上で“日本の、とくに若者は驚くほど歴史を知らないことを考えると、アンネがこんなに読まれているのはすごい”と驚嘆する。
しかし、Lewkowicz氏は同時に、ヨーロッパと日本の受け止め方の違いを挙げる。多くのヨーロッパ人にとってアンネは、ホロコーストとレイシズムの恐ろしさのシンボルとして受け止められているが、日本は違う、というのだ。
「日本では、アンネは第二次世界大戦の被害者の象徴。そして、ほとんどの日本人は自分たちの国を、原爆投下を理由に、アンネと同じ戦争被害者だと考えていて加害者だとは捉えていない」
「日本でのアンネ人気は同じ戦争被害者としての共感によるもの、日本人は広島・長崎のへの原爆投下を理由に自分たちを戦争被害者だとみなしている。一方で日本人はアンネ・フランクと同じ時代に、自国の軍隊が、韓国や中国で、無数のアンネ・フランクをつくり出していたことに思いが至っていない」
今回の高須医院長をはじめとする者たちのツイートなどは、この分析通りと言えるだろう。戦争を繰り返さないためには歴史と対峙し反省することからはじまるが、「戦争加害者」という認識をもたないままのこの国では、宰相を筆頭に政権を担う政治家たちまでが戦争を美化するほど腐敗している。さらに、高市早苗総務相や山谷えり子元国家公安委員長がネオナチ団体の代表とツーショット写真を撮っていたように、日本でもネオナチは跋扈しており、ネオナチ感情の高まりは他国の話ではない。
このような歴史修正主義者の台頭が、指摘された問題の本質を捉えることさえできないという状況を生み出している。今回のイスラエル大使館のツイート炎上は、まさにそれを露呈していると言えるだろう。