一説には、同番組での彼らのギャラは破格の1本あたり1000万円超(「週刊文春」2013年7月4日号/文藝春秋)との報道もあり、芳しい成績を残せていないフジテレビにとって最も切るべき不良債権となっているのは疑いようがない。しかし、このとんねるずの番組がなくなることはないだろう。それは、同番組が日枝久代表取締役会長の「会長案件」となっており、フジテレビの誰も触れることのできない「タブー」だからだ。
日枝会長ととんねるずは現在でも頻繁にゴルフに行く仲ともいわれる。1980年代半ば、『夕やけニャンニャン』でとんねるずが一大ブームを起こしていた時期に編成局長の地位にいたのが、その後フジテレビ社長そして会長へとのぼり詰める日枝だ。彼にとってとんねるずは出世への道を切り開いてくれた恩人にあたる。
元フジテレビ常務で現在は共同テレビジョン代表取締役社長の港浩一は「sabra」(小学館)2007年2月8日号のインタビューで、『とんねるずのみなさんのおかげです』がはじまったのも、石橋貴明本人が「視聴率30%を取れなかった場合は、石田弘プロデューサーを飛ばしても構いません」とレポート用紙に書いて日枝編成局長(当時)に渡したのがきっかけであったと内幕を明かしている。このエピソードからも、日枝会長ととんねるずのズブズブぶりがよく分かるだろう。
13年には亀山千広新社長が就任。『森田一義アワー 笑っていいとも!』『ライオンのごきげんよう』など看板長寿番組を次々と終了させるテコ入れ策が取られているが、「会長案件」タブーであるとんねるずの番組には手がつけられていない。今後も日枝が会長の椅子に座り続ける限り、どれだけ赤字を垂れ流そうとも番組が終わることはないだろう。
確かに、近年のテレビ局の表現に関する萎縮は行き過ぎな面がある。報道番組における政権批判に対する自主規制はもちろんのこと、バラエティに対する規制も過剰としか思えないところがある。その反動か、タトゥー、ミゼットプロレス、秘宝館、地下格闘技などの現在では地上派放送不可能なネタに敢えてスポットを当てる『BAZOOKA!!!』(BSスカパー!)が人気を集めるといった現象も起きているわけだが、だからといって、とんねるずが象徴する「時代遅れ」な「なんでもあり」がテレビ離れの進んだ人々をもう一度テレビの前に呼び戻す特効薬になるかといえば、そんなことはないだろう。フジテレビ会長という強者の庇護に守られている芸人による「過激」は単なる「パワハラ」でしかないと思うのである。
(新田 樹)
最終更新:2017.11.12 02:36