ここで、「脱臭機」という言葉が出てくるが、特殊清掃の業者にとって、この「オゾン脱臭機」は必須の機材。部屋を洗浄した後、オゾンを出すこの機械をなんと3日間も稼働させ続けるのだという。
ただ、このオゾン脱臭機をかけたからといって、必ずしも死体の臭いが取れるわけではない。そのために大事なのは、部屋を洗浄するときに使う薬剤。なんと、この薬剤はどの業者も「企業秘密」な独自の薬剤を使っているという。一般の業務用の洗剤では死体の汚れは落ちないのだ。だから、どの特殊清掃業者も試行錯誤を重ね、オリジナルの薬剤を開発している。ダイウン株式会社でも、死体の脂分を除去できる特別な配合の薬剤を使用しているという。
遺体の腐敗は夏場になるほど進行が早くなり、3日ほどで体液が出始める。その腐敗液がフローリングなどの床下にまで浸透していけば、それだけ清掃は困難を極める。息を引き取ってすぐに死体が発見されれば、普通の清掃業者でも対応することは可能だが、このように体液が出てしまうような状況になってしまうと、特殊清掃業者の力を借りなければ部屋の再生は不可能になってしまうという。
人生の最期で、遺体をこのように「汚物」扱いされてしまうのはあまりにも悲しい。だが、本稿冒頭で示した通り、このまま「孤独死」をめぐる問題が放置され続ければ、紹介してきたような事例はどんどん増えていってしまうだろう。国や地方自治体が「孤独死」について向き合うべき時が来ているのではないだろうか。
(井川健二)
最終更新:2017.11.24 07:18